敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
彼女になにをされようと、なにを言われようと、迷わないし怯まない。
唯斗のときには尻尾を丸めて逃げたが、もうそんなふうに弱気にならない。強い気持ちで恵麻を見つめる。
大事な人の手は絶対に離さない。
険悪なムードで睨み合っていると、テーブルに置いていた恵麻のスマートフォンが場にそぐわないポップな音を立てはじめた。
「あ、パパだ」
狡猾な表情が一変、甘えた声でうれしそうに手に取る。
「パパ、ちょうどよかった。お願いしたいことがあるの」
七緒を見てにっこり微笑むのは、自分の勝ちを確信しているからなのか。
「……え? 今から家に? どうして?」
恵麻が目をキョトンとさせて聞き返した直後、『とにかくすぐに帰ってきなさい』という父親の声が漏れ聞こえてきた。どことなく興奮している雰囲気だ。