冷徹上司の氷の瞳が溶ける夜
昼間はビジネスマンで溢れている植栽で囲まれた広場に来た。さすがにこの時間には誰もいない。
「今更私に何の話があるの? 要件を手短に言って」
なるべく祐介の顔を見たくなくて頑なに背を向けた。
「……結愛とのことは、許してほしい」
え……?
何を言っているのかわからない。
「俺が本当にバカだった。どうして麻子と別れるようなことをしてしまったのか、ここずっと後悔しかなくて。どうにかなりそうなんだ」
「……何言ってるの? あんなにも悪びれもなく別れたくせに、よくそんなこと言えるね」
唖然として祐介の方に振り向いてしまう。祐介の別れ際の捨て台詞の全てを覚えている。
「結愛は麻子と全然違う。結愛と一緒にいて気づいたんだ。麻子がどれだけいい女だったかって。結愛は、自分では何もできないくせにわがままばかりで、もう付き合いきれない。結愛のことは気の迷いだった」
呆気に取られて言葉も出ない。
「俺、寂しかったんだ。麻子にもっと俺のこと見てほしくて。それで、俺を誘惑してきた結愛につい――」
「ふざけないで。そんな話、もうどうだっていいから。今は結愛と暮らしてるんだよね? ちゃんと責任をとって。もうこんなことしないで!」
「麻子!」
立ち去ろうとした腕を強く引っ張られる。
「結愛には出ていってもらう。だから、俺とよりを戻して」
「私、好きな人がいる。その人と付き合ってるの。だからもうやめて」
「え……?」
祐介の手の力が緩む。その隙に思い切り手を振り払い、走り出した。