Melts in your mouth
また発熱してたりしたらどうしようかと懸念があったが、私の指先から感じる平野の体温が平常で安堵の息を静かに落とす。しかしながら気のせいか?何だかどんどん温度が高くなっている様な…。
そう感じて眉間に皺を寄せたのも束の間、目前にいる男の美しい顔があっという間に紅潮した。
「え、ちょっ…マジタイム。一旦ストップ。何これ、何この状況、俺異世界に転生しちゃった?永琉先輩から溺愛されちゃうハッピーエンドルートに辿りついた感じ?」
「あ?何言ってんの。」
「あ、普通の永琉先輩だ。一瞬で氷点下の冷たさに戻ってて悲しいけど安心しちゃう。」
「…っ煩いな、私そろそろ休憩上がりだからそろそろ行…「待って。」」
はっきりと申し上げると、その場からさっさと立ち去りたい一心だった。
一度伸ばした手の仕舞い方すら分からなくなり、そそくさと立ち上がってこの場を後にしようと鈍くなっている思考でどうにか作戦を練ったにも関わらず、平野の手が私の手首を捕らえたことにより呆気なく作戦が散った。
握られている手首が、相手の体温が、酷く熱い。
さっきまで舌の上で幸福を提供してくれていたザッハトルテみたいに、今にも自分の心が蕩けてしまいそうな妙な感覚に襲われる。
「逃げるのはルール違反です。」
「何のルール違反になんの。」
「勿論俺のですけど?」
「最高のキメ顔すんな。」
「ねぇ、先輩。永琉せんぱい。」
「な、なに。」
甘い甘い声色に変わった相手の口から、自分の名前を呼ばれるだけで鼓動が脈を打つ。ドキドキ、ドキドキと心拍数が上昇していく。