Melts in your mouth
傷ついたと主張しているが、好きな男が風俗のボーイをしている清らかな理由がポンポンと思いつく方が珍しいだろ。
「あ、じゃあキャバ嬢に入れ込んで貢ぐ為に稼いでるとか?」
「違う違う全然違う。てか俺こんなに永琉先輩一筋なのに、キャバに入れ込む余裕とかないですから。」
「それなら他にどんな理由があんの?」
「そんなの決まってるじゃないですか!」
「何が決まってんの。」
「俺が童貞だからです!!!!」
「………は?」
「え、あ、あーーーーーー!!勢い余って口滑ったー!!!!」
相手の放った台詞に脳味噌の理解が追い付いた時には、顔面を蒼白させている平野が絶望した様に頭を抱えてソファーに顔を埋めた。
恥ずかしい、死にたい、穴があったら入りたい。ブツブツ早口で呪文みたいに唱えている相手を凝視する私は、きっと心底驚いた表情をしているのだろう。
だって、今、この男、自分の事を童貞と言った。とても信じられない事だが、こんな場面で嘘つく意味もないし、そもそも嘘をついている様にはとても見えない。
「え、平野、本当に童貞なの?」
「ううっ…そうです…。」
何とも消え入りそうな声に乗せられた返答が、丁寧に花瓶に生けられた花が彩を添えているテーブルに溶けていく。
誰がこんな事を予想できただろうか。少なくとも私は予想できなかった。まさか平野がⅮ(童貞)の称号を持つ者だなんて。