Melts in your mouth




どうして愛おしい愛おしい昼休みにこいつの顔面を見なければならないのか即刻説明願いたい。


食道を通過しかけていた南瓜の煮物が逆流しそうになるのを根気で胃に落とし込んだ私は、クソ空気の読めない我が後輩にありったけの冷たい視線をグサグサ刺した。



「あ、永琉先輩と目が合っちゃった。やっぱり俺達運命ですね。」



だがしかし、脳内花畑のこの馬鹿にそれがまともに通用するはずがなかった。妄言を吐き散らしてバチコンと片目を器用に閉じてアイドルみたいな完璧なウィンクを飛ばしてくる相手に、まだ消化されていない弁当全てを吐いてしまいそうなまでに胃がムカムカする。


あんたずっと何言ってんの?ていうかどうやってここが分かったんだよ、お前からランチの誘いを受ける度に逃げて逃げて逃げてやっとこさ発掘した私のオアシスだったのに、何で普通に堂々とお前がいんのよ。



この男の登場と共に体調不良が発生する。これはもう皆さんお察しの事と思うが、平野アレルギーの顕著な症状の一つである。


一々平野とまともに取り合っていても埒が明かないし時間を浪費するだけだと既に心得ている私は、平野の酔狂な発言を聞かなかった事にして残りの弁当を平らげた。



「せーんぱい、ほっぺ赤くなってますよ。もしかしなくても照れてます?可愛いー。」



もしかしなくても胸焼けを覚えているんだよ!!!それも!!!オメェに対してな!!!



百歩譲って頬が紅潮しているのだとしてもそれは断じて平野が理由ではない。当たり前だけど平野にこっちが赤面するなんて、どんな異世界転生ファンタジー物語でも有り得ない。

そしてお前まるで山田に挨拶する素振り見せてないけど社会人になって一体何を学んできた?これじゃあ先輩の私が能無しみたいに思われるんですけど?気遣いって言葉を今すぐ辞書で引いてくれ。


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