運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
「出産後すぐではないし、大丈夫よ。お母様も臨月からこちらに来てくれて、レセプションパーティーまでずっと居てくれるから」

 今や怜の母は、さくらにとっては本当の母以上の存在だ。

 怜と籍を入れた際に、さくらは疎遠になっている両親に連絡を入れたのだ。だが、両親共に新しい家庭を持ちさくらの結婚にも無関心だった。相手を紹介することもなく終わった。

「無理はしないでくれよ」
「わかってる。怜こそ忙しいのに、東京と沖縄の往復で大変でしょう?無理しないでね。パパにはずっと元気でいてもらわないと」
「ああ。桂の成長も赤ちゃんの誕生も楽しみだ。まだまだ頑張るぞ」

 怜さんから怜と呼ぶようになった。いつ赤ちゃんが出来ても可笑しくない程の溺愛ぶりに、みんなが待っていたくらいだ。

 怜の祖父も年齢を感じさせないフットワークの軽さで、怜以上に沖縄に滞在している。

 この地に来て彩葉に出会い、桂を妊娠していることがわかり、怜の存在がなくても幸せだと思っていた。

 だが、怜と再会し桂の父親として、さくらのダンナ様として、今やいないことが考えられない。



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