【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。
つい昨日まで、冷蔵庫には飲み物しかなかったはず。

昨日まで社長の冷蔵庫には、飲み物以外なにも入っていなかった。

そもそも社長は朝食をとる習慣がなく、料理をする人でもない。

それなのに──どうして。

 呆然と立ち尽くす私をよそに、社長は鼻歌まじりで料理をテーブルに並べていく。

 そこに並んだのは、ホテルのルームサービス顔負けの豪華な朝食だった。

 真っ白な丸皿には、エッグベネディクトとナッツを散らしたベビーリーフのサラダ。

ガラスの器にはヨーグルトが盛られ、苺やゴールデンキウイのフルーツが彩りを添え、上からはとろりと蜂蜜がかけられている。

 さらに別皿には小ぶりのパンが籠いっぱいに盛り合わされ、テーブルの端にはオレンジジュースにデトックスウォーター、アイスコーヒーと、まるで選べるドリンクバーのように並んでいた。

「ホットコーヒーもあるぞ」

 圧倒されて言葉を失っている私に、社長は満面の笑みを向けてきた。

 勝手なイメージだけれど、男の人の料理って、チャーハンとかパスタとか、一品料理みたいなものしか作れないと思っていた。

なのに、目の前のこれは……まるでホテルのシェフが作ったみたいな完璧なエッグベネディクト。
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