憧れのCEOは一途女子を愛でる
 ここまで来たら、どんな人なのかこの目で見てみたくなった。
 祖父がイケメンだと褒めまくっているのは単なるお世辞とは思えないので、だんだんとその容姿が気になってきたのだ。ジニアールの社長とお孫さんでは、どちらがイケメンだろう?
 一瞬そんな考えが浮かんだものの、申し訳ないけれどうちの社長には敵わないと思う。

 私が今まで目にしてきた男性の中で、社長の顔がダントツで整っていると言い切る自信がある。
 普段から社内報やホームページの写真を眺めてうっとりとしている女子社員はたくさんいるし、決して私だけが社長を贔屓目に見ているわけではない。
 
 それから五分も経たないうちに部屋の入口の扉が開き、ひとりの男性が入って来た。
 黒のスリムなパンツと水色のリネンシャツを羽織った背の高い人だ。

「おお、こっちだ、こっち!」

 辰巳さんが座ったまま片手を上げて男性に声をかけた。
 傘立てに傘を置くためにうつむいていたので最初はわからなかったのだが、その男性が振り返ってこちらに顔を向けた途端、私はハッと息をのんだ。

「……え?」

 視力が落ちたのだろうか。もしくは幻でも見ているのかと思い、右手の指で瞼をゴシゴシと擦ってみる。

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