恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
「あの、筧さん? これはいったい」
「もう退職は表明しているんだよな? この会社に未練はないか、最後に確認だ」
「退職は、もう申し出ていますし、未練はないです」
「その言葉が聞けたなら問題ない」
「え……?」
筧さんは私の手をしっかり掴んだまま、受付を過ぎ社内に入っていく。
オフィスに足を踏み入れると、社内にいた社員たちは次々にこちらに目を向けた。
「神田里穂子の直属の上司の方は、こちらにいらっしゃいますか?」
入ってすぐに鉢合わせた人事部の人に筧さんがそう声をかける。
筧さんを前にした社員たちは慌てたように私の所属する営業一課の課長のところに飛んでいき、課長に筧さんの訪問を知らせた。
ただならぬ空気に続々と注目が集まり、その中に湯島くんの顔も見える。
「お待たせいたしました。営業一課の渡部と申します。えっと……」
課長は筧さんに挨拶すると、私と筧さんの関係を窺うように交互に私たちを見る。
「突然の訪問失礼します」
そう言った筧さんは名刺を取り出し、課長に手渡す。
「すみません」とそれを受け取った課長の目が飛び出しそうになるのを 目撃した。