恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました


「か、筧地所グループの、あの、筧さん……? に、似た方だなとは思ったのですが、まさかご本人とは!」


 動揺しすぎて課長の言葉はおかしく、名刺と筧さんを交互に見る目は見開かれたまま。 こんな様子の課長は初めてだ。

 周囲がざわつくのを肌で感じ取る。


「里穂子……私の妻が、これまで大変お世話になりました」

「つっ、妻!?」


 ひっくり返ったような課長の声が響き渡る。一瞬にして失礼な態度だったと気付 いたのか、課長は自分の口を手で押さえた。

 そんな課長を目にしながら、私の心臓も盛大な音を立てて暴走している。こんなにたくさんの人が見ている場で、筧さんに〝妻〟だと宣言されたのだ。落ち着いてなんかいられない。


「同僚からひどいハラスメントを受けていることを、彼女は私に隠していて」

「えっ、ハラ、ハラスメント、ですか?」

「正式な退職日まで、彼女は出社しようとしていましたが、私が止めました。これ以上、妻が被害を受けることはなんとしてでも避けたい」


 はっきりとした丁寧かつ堂々とした口調で筧さんが課長に話を続ける。

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