恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました


「きゃああ!」


 目の前で、麗香さんが叫び声をあげる。

 何事かとその先に視線を向けて、見えた光景に目を見開いた。


「筧の会長夫人……見つけた」


 ぼさぼさの髪、黒く焼けた肌。薄汚れた白い丸首シャツにしみだらけの黒いズボン。

 お義母様を見つめる目は焦点が定まらず、明らかに正常ではない。

 なにより私が驚いたのは、その顔をよく知っていたから。


 嘘、でしょ……? 湯島、くん……?


 以前のできるサラリーマンの見る影もなく、ただただ目を疑うしかない。

 いったい彼になにが起こったのか、そんなことを考えているうち、その足が一歩前に出る。


「抵抗しないで一緒に来てもらおう」


 その手には、小さな果物ナイフがきらりと光って見える。


「あっ、あなたなんなの! 来ないで!」


 近付いてくる湯島くんに、目の前のお義母様は後ずさる。

 となりにいる麗香さんに助けを求めるように縋りつこうとしたが、麗香さんはお義母様を力いっぱい振り払って一目散にホテル奥へと逃げていく。


「お義母様!」


 その反動でよろけたお義母様の体を支え、自分が盾になるようにして湯島くんと対峙する。

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