幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
第二十二章 壁ドンのあごクイ?
「長島さん、吹奏楽部の子ども達の希望曲は決まりましたか?」
「あ、決まりました。うちの町では有名な、なんやったかなー?ナントカカントカ言うカタカナの作曲家の曲です」

朱里は思わず笑い出す。

「長島さん、それだけだと分からないです」
「ですよねー。あはは!」
「じゃあ、この電話番号を部員の子達に伝えて頂けますか?私も直接話したいので、良かったら電話くださいと」
「分かりました!伝えますわ」

兵庫でのコンサート。
朱里は舞台で一緒に演奏する吹奏楽部の10人の子達に良い思い出を作ってもらいたいと、詳しく話を聞くことにした。

するとその日の夕方に、早速部員達から電話がかかってきた。

「朱里さーん、こんにちはー!」

どうやら学校の職員室からかけているらしく、朱里さーん!と何人もの声がする。

「こんにちは!みんな元気?」
「元気元気ー!朱里さんは?瑛さんと仲良くしてるの?」
「な、仲良く?うん、まあ、してるよ」

キャー!と歓声が上がる。

「あ、あの、みんな?えっと、やりたい曲は決まった?」
「決まりましたー!ドヴォルザークの『新世界より』第2楽章です」

へえー!と朱里は少し意外な気がした。

(みんな若い女の子だから、てっきりポップスがやりたいのかと思ったのに…)

「ドヴォルザークか…。いいね!どうしてこの曲をやりたいと思ったの?」
「この第2楽章、うちの町内放送で必ず夕方の5時に流れるんです。だから、この町のみーんなの曲なの。それにドヴォルザークは、故郷を思い出してこの曲を書いたんですよね?私達も、いつか都会に出て行ったとしても、生まれ育ったここはずっと大切に覚えていたくて。市民会館の最後の舞台は、この曲で締めたいねって、みんなで決めたんです」
「うう、なんていい話なの。もう私、感激して涙が出そう。分かった!この曲でいこう!」
「はい!」

朱里は電話を切ると、すぐに東森芸術文化センター管弦楽団に連絡する。

常任指揮者の赤坂に子ども達の意向を伝え、是非この曲で合同演奏をお願いしたいと伝えると、それなら、子ども達一人一人にメロディをソロで吹いてもらうようアレンジする、と言ってくれた。

(うっひゃー!楽しみ!みんな、がんばれー)

朱里はわくわくしながら電話を切った。
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