幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「朱里ちゃん。実は朱里ちゃん達の演奏活動について、最近色々と考えていてね」

 桐生家で夕飯をいただいていると、瑛の父が話しかけてきた。

 今夜は雅に語りの原稿を届けに来たのだが、たまたま早く帰宅していた瑛の父に夕食に誘われたのだった。

 瑛もいた為、断りたかったが、演奏会についての話がしたいと言われては従うしかなかった。

 「今、我が社でもCSR活動に力を入れていてね。つまり Corporate Social Responsibility として、環境問題に取り組んだり、地域の活性化、子ども達の情操教育、年配の方への憩いの場など、とにかく幅広く社会貢献したいと思っている。朱里ちゃん達の演奏会も、まさにその一環ではないかと考え始めたんだ」

 朱里は手を止めて考える。

 「おじ様の会社のような大企業がCSR活動されるのは、とても有り難いことだと思います。中小企業ですと、やりたくても予算が取れませんし。桐生ホールディングスは、大規模な地球温暖化対策やサステナブルの活動も既に広くされていますものね。ですが、私達の演奏活動は全く別です。私達はプロではないので、逆に演奏を聴いてくださってありがとうございます、とこちらが思っています」
 「技術面ではそうだが、私はプロのコンサートより朱里ちゃん達の演奏会の方が、アイデア満載で好きだけれどね」

 すると話を聞いていた雅が頷いた。

 「そうよ。それに、優も気兼ねなく連れて行けるでしょう?そんなコンサート、なかなかないもの」
 「ああ、確かに。それでね、朱里ちゃん。我が社のCSR活動の一環として、音楽や芸術方面も本格的に始めようと思うんだ」

 へえーと朱里は感心する。
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