Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
「……でもこんなことのためにお父様を使うのはどうかと思うけど」
「そうかもしれない。けど俺にとっては最重要事項だからね。六花に信じてもらうためなら親だって使う。それくらい真剣なんだ」

 お父様の言う通りねーー本当に不器用な人なんだわ。でもそれすらも可愛いく見えてしまうのに、つい意地を張ってしまう私も同類かもしれない。

「さっきのお父様の話ね、もう少し聞いていたいって思っちゃった。私の知らない宗吾のことをもっと知りたくなった」
「俺に聞けばいいじゃないか」
「家族に聞くから面白いんじゃない。本人に聞いたら脚色されそう」
「まぁ確かにカッコつけたいから、恥ずかしい部分は隠すかもしれない」
「でしょ? でも宗吾の好みって謎だわ。ガサツだし、ズボラだし、性格キツいし、私に可愛いところなんて何もないのに……」
「それが全部六花の魅力だとは思わないのか?」
「思わない。むしろ欠点よ」

 でも生まれ持った性格だから変えられない。きっと可愛いくなれない自分をどうにか変えたくて、見た目だけはキレイに装っていたのだと思う。今は全く無理をしていないし、気持ちは楽になった。

 宗吾は六花の手をとると、指を絡める。触れ合う部分が熱くくすぐったくて、胸が苦しくなった。

「俺はそんな六花が可愛いくて仕方ないし、今すぐベッドに行ってあの甘い声を聞きたくてたまらないのに」
「なっ……何言ってんの⁈ 本当にあんたって変わってる」

 あぁ、そうか。宗吾は最初から私に対して態度が悪かったから、私も何も装わずに歯向かったんだ。だって自分を良く思っていない人に可愛いくみせたって意味がないから。それが逆に素の自分を見せられる人になったのね。

 六花は宗吾の手を振り払い、到着したエレベーターに乗り込む。それから駐車場へと降りるボタンを押す。モーター音が微かに聞こえる中、宗吾が背後から抱きついたものだから、六花の心臓が大きく飛び跳ねる。

「好きになるのに理由はいらないよ。心と頭がこの人だって言ってるのに、どうして否定するんだ?」

 否定なんてしてない。心の中では宗吾が好きだと認めてるし、本当はすごく嬉しくて仕方ない。

 それにさっきのお父様との会話ーー実はじわじわと気になり始めていることがあった。

『愛する人たちを守るため』

 何故複数形なの? これまでの会話でも似たような感覚になることがあった。娘のことを知っているのではと、改めて疑問に思い始める。

 考え過ぎなのかしら……ただ何も考えずに彼の胸に飛び込めるほど楽天的にはなれなかった。
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