Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
暗がりの中で目を凝らすと、宗吾の車のそばに二人の人影が見えた。二人が少しずつこちらに近付いてくると、ようやく男女であることがわかる。
スーツ姿の男性と、水色のブラウスにアイボリーのフレアスカートの女性が、宗吾に向かって手を振っていた。
「兄さん⁈ なんでここに?」
二人に気付いた宗吾が驚いたような声を上げる。
宗吾の兄だという男性は、にこやかな表情を浮かべて宗吾のそばへと駆け寄ってくる。後ろの女性はそんな彼を微笑ましそうに見守っていた。
「父さんから宗吾が今日会社に来るって聞いたからさ、たまたま仕事も休みだったし会いにきたんだ」
「そんなわざわざ来なくていいのに」
冷たくあしらうように言い放つと、後ろの女性が笑いながら口を開く。
「この半年近く宗吾くんが全く帰国しないから、俊哉さんは気が気じゃなかったのよね」
「だって一人で海外支社の視察なんて、やっぱり心配するじゃないか」
「いい大人が心配とかやめてくれよ」
会話の中に入れず、三人が話す様子に耳を澄ませていた六花は、兄とその横の女性の姿をチラリと観察していた。
やはり兄弟だからか、お兄さんとは雰囲気が似ている気がする。それを言えば、お父様も同じような空気感だった。
女性は髪が長くて、女性らしい柔らかい雰囲気に包まれている。こういうファッション、私も昔好きだったから懐かしい。
六花はあまり深くは考えずに話を聞いていたが、何故か宗吾の様子がどこかおかしいことに気付いた。
気まずそうな表情でチラチラと六花を見ては、なるべく早めに会話を切り上げようとしているように見えたのだ。
すると宗吾の兄が六花の方に向き直り、スッと手を差し出した。
「君が阿坂さんだよね! 噂は予々きいてるよ。まさかここで会えるとは思わなかったから嬉しいな」
また私のことを知っている人がいたーー宗吾は一体誰にどこまで話しているのよ……。
「初めまして。阿坂六花です」
「宗吾の兄の俊哉です。で、こちらがーー」
「俊哉さんの妻の朝夏です。名前が一緒だなんてびっくり!」
六花の顔は強張り体が硬直した。朝夏? それってまさか……。
「……朝夏さん……ですか?」
「えぇ、よろしくね」
笑顔がきらきらと眩しい女性の名前が"朝夏さん"だと知った瞬間、六花の中で全てのパズルのピースがはまるのを感じた。
ようやく宗吾の言葉に応えられると思ったのに、逆にどん底へと突き落とされた。
スーツ姿の男性と、水色のブラウスにアイボリーのフレアスカートの女性が、宗吾に向かって手を振っていた。
「兄さん⁈ なんでここに?」
二人に気付いた宗吾が驚いたような声を上げる。
宗吾の兄だという男性は、にこやかな表情を浮かべて宗吾のそばへと駆け寄ってくる。後ろの女性はそんな彼を微笑ましそうに見守っていた。
「父さんから宗吾が今日会社に来るって聞いたからさ、たまたま仕事も休みだったし会いにきたんだ」
「そんなわざわざ来なくていいのに」
冷たくあしらうように言い放つと、後ろの女性が笑いながら口を開く。
「この半年近く宗吾くんが全く帰国しないから、俊哉さんは気が気じゃなかったのよね」
「だって一人で海外支社の視察なんて、やっぱり心配するじゃないか」
「いい大人が心配とかやめてくれよ」
会話の中に入れず、三人が話す様子に耳を澄ませていた六花は、兄とその横の女性の姿をチラリと観察していた。
やはり兄弟だからか、お兄さんとは雰囲気が似ている気がする。それを言えば、お父様も同じような空気感だった。
女性は髪が長くて、女性らしい柔らかい雰囲気に包まれている。こういうファッション、私も昔好きだったから懐かしい。
六花はあまり深くは考えずに話を聞いていたが、何故か宗吾の様子がどこかおかしいことに気付いた。
気まずそうな表情でチラチラと六花を見ては、なるべく早めに会話を切り上げようとしているように見えたのだ。
すると宗吾の兄が六花の方に向き直り、スッと手を差し出した。
「君が阿坂さんだよね! 噂は予々きいてるよ。まさかここで会えるとは思わなかったから嬉しいな」
また私のことを知っている人がいたーー宗吾は一体誰にどこまで話しているのよ……。
「初めまして。阿坂六花です」
「宗吾の兄の俊哉です。で、こちらがーー」
「俊哉さんの妻の朝夏です。名前が一緒だなんてびっくり!」
六花の顔は強張り体が硬直した。朝夏? それってまさか……。
「……朝夏さん……ですか?」
「えぇ、よろしくね」
笑顔がきらきらと眩しい女性の名前が"朝夏さん"だと知った瞬間、六花の中で全てのパズルのピースがはまるのを感じた。
ようやく宗吾の言葉に応えられると思ったのに、逆にどん底へと突き落とされた。