Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
あぁ、そうか。そういうことなんだーー。彼女を見た瞬間の既視感。あれは私自身を反映していた。
朝夏さんの髪型も服装も、全く同じではないが、学生時代の私に重なるものがあった。確かに見た目は似ているし、名前も名字とはいえ同じだしーーただ持ち合わせている性格は真逆のような気がする。
つまり宗吾は兄の恋人に恋をしていたということだろうか……そう考えれば合点がいく。
きっと好きな人と真逆の性格の私に苛立ちを覚えたのだろう。しかも名前が同じだから必然的に"アサカさん"と呼ばなければならない。もしかしたら私がいたことで、知らぬうちに彼女のことを思い出して苦しんでいたのかもしれない。
宗吾にあんな態度をとらせたのは、私のせいだったんだーーそう考えると息苦しくなってくる。
「子どもたちは?」
「今日は母さんが見てくれてるんだ」
「久しぶりに二人でデートでもしてきたらって言ってくださってね。でも子どもたちも宗吾くんに会いたがってたし、連れてくれば良かったかしら」
「またいずれ会いに行きますよ。今日は貴重な時間でしょう?」
「まぁね」
宗吾が朝夏さんを見る目はどこか優しく感じる。話し方だって柔らかく耳に響いた。そんな現実を目の当たりにすると、彼がまだ朝夏さんを大切に思っているのが伝わってくる。
やっぱり私なんかじゃ朝夏さんの代わりにはならないーー六花はそう思いながら俯いた。社長の話を聞いて少しだけ自信が持てたのに、一瞬で崩れていくのを感じる。
愛情は勝ち負けではないけど、彼女より愛されてる自信なんてなかった。朝夏さんを見るたびに、宗吾の想いを思い出してしまう。
六花は一歩退き、エレベーターのボタンを押した。それに気付いた宗吾が振り返り、六花のそばに近寄る。
「あ、あの、ちょっとお手洗いに行ってきていい? 先に車でまっててくれていいから」
「一緒に行くよ」
「ううん、大丈夫。久しぶりに会ったんでしょ? もう少しお話ししてて」
そう言い残すと、六花は慌てて到着したエレベーターに乗り込んだ。それから笑顔を顔に貼り付けて、ドアが閉まるのを待った。
どうしよう……不安で胸がいっぱいになる。あの時ーー妊娠がわかった時と同じ気持ちになり、呼吸の仕方がわからなくなる。
宗吾の好きな人を知って怖くなった。私は朝夏さんにはなれないし、きっとこれからも彼は想いを秘めた瞳で朝夏さんを見つめるに違いないーーそんなこと耐えられない。
一階に到着するとすぐにロビーを走り、人々の間をすり抜けて外へ飛び出す。辺りをキョロキョロと見渡し、大通りへと走り出した。
それから手を挙げてタクシーを止めると、実家の住所を告げる。
本当はこんなことをしたらいけないのはわかっているけど、あの場に戻る勇気も、宗吾と顔を合わせる心の強さも持ち合わせていなかった。
扉が閉まるとタクシーは走り出し、その場を後にした。
朝夏さんの髪型も服装も、全く同じではないが、学生時代の私に重なるものがあった。確かに見た目は似ているし、名前も名字とはいえ同じだしーーただ持ち合わせている性格は真逆のような気がする。
つまり宗吾は兄の恋人に恋をしていたということだろうか……そう考えれば合点がいく。
きっと好きな人と真逆の性格の私に苛立ちを覚えたのだろう。しかも名前が同じだから必然的に"アサカさん"と呼ばなければならない。もしかしたら私がいたことで、知らぬうちに彼女のことを思い出して苦しんでいたのかもしれない。
宗吾にあんな態度をとらせたのは、私のせいだったんだーーそう考えると息苦しくなってくる。
「子どもたちは?」
「今日は母さんが見てくれてるんだ」
「久しぶりに二人でデートでもしてきたらって言ってくださってね。でも子どもたちも宗吾くんに会いたがってたし、連れてくれば良かったかしら」
「またいずれ会いに行きますよ。今日は貴重な時間でしょう?」
「まぁね」
宗吾が朝夏さんを見る目はどこか優しく感じる。話し方だって柔らかく耳に響いた。そんな現実を目の当たりにすると、彼がまだ朝夏さんを大切に思っているのが伝わってくる。
やっぱり私なんかじゃ朝夏さんの代わりにはならないーー六花はそう思いながら俯いた。社長の話を聞いて少しだけ自信が持てたのに、一瞬で崩れていくのを感じる。
愛情は勝ち負けではないけど、彼女より愛されてる自信なんてなかった。朝夏さんを見るたびに、宗吾の想いを思い出してしまう。
六花は一歩退き、エレベーターのボタンを押した。それに気付いた宗吾が振り返り、六花のそばに近寄る。
「あ、あの、ちょっとお手洗いに行ってきていい? 先に車でまっててくれていいから」
「一緒に行くよ」
「ううん、大丈夫。久しぶりに会ったんでしょ? もう少しお話ししてて」
そう言い残すと、六花は慌てて到着したエレベーターに乗り込んだ。それから笑顔を顔に貼り付けて、ドアが閉まるのを待った。
どうしよう……不安で胸がいっぱいになる。あの時ーー妊娠がわかった時と同じ気持ちになり、呼吸の仕方がわからなくなる。
宗吾の好きな人を知って怖くなった。私は朝夏さんにはなれないし、きっとこれからも彼は想いを秘めた瞳で朝夏さんを見つめるに違いないーーそんなこと耐えられない。
一階に到着するとすぐにロビーを走り、人々の間をすり抜けて外へ飛び出す。辺りをキョロキョロと見渡し、大通りへと走り出した。
それから手を挙げてタクシーを止めると、実家の住所を告げる。
本当はこんなことをしたらいけないのはわかっているけど、あの場に戻る勇気も、宗吾と顔を合わせる心の強さも持ち合わせていなかった。
扉が閉まるとタクシーは走り出し、その場を後にした。