Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
* * * *
タクシーを降りた六花が実家のインターホンのボタンを何度も押すと、ドアの奥から母親の声が聞こえ、開いた瞬間に中へ飛び込んだ。
「えっ⁈ ど、どうしたの? あなた一人なの?」
驚く母を押し退け、ズカズカと家に入って行く。そしてリビングで父親に抱かれた娘の姿を見つけた途端に、胸が熱くなり涙が溢れる。
「まーちゃん! 会いたかったよ……」
それは娘も同じだったようで、六花を見るなり瞳を輝かせ手を伸ばして可愛い声を漏らす。
父親から娘を受け取り、久しぶりに抱きしめた。温かくて、柔らかくて、ほんのりミルクの匂いがする。
「あはは。まーちゃん、ちょっと重くなった?」
「そんなことないわよー。ちゃんと適量をあげてたもの。ねぇ、お父さん」
「まぁ久しぶりだからね、そういう時って重く感じたりするじゃないか」
「あぁ、確かにそうね」
やっぱり私はまーちゃんがいればそれだけでいい……宗吾が欲しいなんて、そんなのは贅沢。二人で楽しく過ごしてきたじゃない。それだけで私は幸せだもの。
「それにしても、突然どうしたの? 友達は?」
母親に問われ、ドキッとした。
「……は、早めに切り上げることになったの。新しい仕事が入ったって連絡が来たから帰ることになって……」
「そんな急に?」
「そう。だからまーちゃんの哺乳瓶とかまとめてくれる? 私も部屋から荷物を持ってくるから……そうしたらすぐに出発する」
「夕飯くらいは食べて行ったら?」
「それだと遅くなっちゃうし。あっ、お父さん、駅まで車で送ってくれない?」
「いいけど……残念だなぁ。まーちゃんともっと遊びたかったのに」
「……またすぐに来るから。ごめんなさい」
娘を再び父親に預けると、六花は自分の部屋に駆け込んだ。幸い荷物をほとんど出していなかったため、机に置いてあった化粧道具や部屋着をしまうだけで済んだ。
リビングに戻ると、母親が哺乳瓶などを袋に入れながら誰かと電話で話しているのが見えたが、六花が戻って来たのを見て電話を切る。
「誰?」
「ん? お姉ちゃん。子どもたちを連れて来たかったんだって。でも帰るって言うからまた今度にするって」
「あ……そうだ、約束してたんだっけ。後で私からも連絡しておく」
母親から荷物を受け取ると、父親が車のキーを持ってやって来る。
「なんかドタバタしちゃってごめんなさい。まーちゃんのお世話、ありがとうございました」
「いい子にしてたもんねー。あっ、そうだ。まーちゃんの一歳のお誕生日会はうちでやりましょう! 一升餅とか準備しなきゃ」
「わかった。楽しみにしてるね」
「いつでも帰っていらっしゃい。こっちに戻ってきてもいいのよ」
「うん、考えておく」
そう言ったが、戻るつもりはなかった。父親が荷物を持ってくれたので、六花は娘を抱いて家を出た。この子がいるだけでこんなにも温かい気持ちになれるーー離れていた時間を埋めるかのように、六花は愛生を強く抱きしめた。
タクシーを降りた六花が実家のインターホンのボタンを何度も押すと、ドアの奥から母親の声が聞こえ、開いた瞬間に中へ飛び込んだ。
「えっ⁈ ど、どうしたの? あなた一人なの?」
驚く母を押し退け、ズカズカと家に入って行く。そしてリビングで父親に抱かれた娘の姿を見つけた途端に、胸が熱くなり涙が溢れる。
「まーちゃん! 会いたかったよ……」
それは娘も同じだったようで、六花を見るなり瞳を輝かせ手を伸ばして可愛い声を漏らす。
父親から娘を受け取り、久しぶりに抱きしめた。温かくて、柔らかくて、ほんのりミルクの匂いがする。
「あはは。まーちゃん、ちょっと重くなった?」
「そんなことないわよー。ちゃんと適量をあげてたもの。ねぇ、お父さん」
「まぁ久しぶりだからね、そういう時って重く感じたりするじゃないか」
「あぁ、確かにそうね」
やっぱり私はまーちゃんがいればそれだけでいい……宗吾が欲しいなんて、そんなのは贅沢。二人で楽しく過ごしてきたじゃない。それだけで私は幸せだもの。
「それにしても、突然どうしたの? 友達は?」
母親に問われ、ドキッとした。
「……は、早めに切り上げることになったの。新しい仕事が入ったって連絡が来たから帰ることになって……」
「そんな急に?」
「そう。だからまーちゃんの哺乳瓶とかまとめてくれる? 私も部屋から荷物を持ってくるから……そうしたらすぐに出発する」
「夕飯くらいは食べて行ったら?」
「それだと遅くなっちゃうし。あっ、お父さん、駅まで車で送ってくれない?」
「いいけど……残念だなぁ。まーちゃんともっと遊びたかったのに」
「……またすぐに来るから。ごめんなさい」
娘を再び父親に預けると、六花は自分の部屋に駆け込んだ。幸い荷物をほとんど出していなかったため、机に置いてあった化粧道具や部屋着をしまうだけで済んだ。
リビングに戻ると、母親が哺乳瓶などを袋に入れながら誰かと電話で話しているのが見えたが、六花が戻って来たのを見て電話を切る。
「誰?」
「ん? お姉ちゃん。子どもたちを連れて来たかったんだって。でも帰るって言うからまた今度にするって」
「あ……そうだ、約束してたんだっけ。後で私からも連絡しておく」
母親から荷物を受け取ると、父親が車のキーを持ってやって来る。
「なんかドタバタしちゃってごめんなさい。まーちゃんのお世話、ありがとうございました」
「いい子にしてたもんねー。あっ、そうだ。まーちゃんの一歳のお誕生日会はうちでやりましょう! 一升餅とか準備しなきゃ」
「わかった。楽しみにしてるね」
「いつでも帰っていらっしゃい。こっちに戻ってきてもいいのよ」
「うん、考えておく」
そう言ったが、戻るつもりはなかった。父親が荷物を持ってくれたので、六花は娘を抱いて家を出た。この子がいるだけでこんなにも温かい気持ちになれるーー離れていた時間を埋めるかのように、六花は愛生を強く抱きしめた。