幼なじみ社長は私を姫と呼んで溺愛しています
しばらくそのままずっと私の髪をなでていた千紘は、顎を持ち上げて唇を重ねた。

赤い目をした千紘が、私を瞳に映してやわらかく微笑む。

「愛してるよ、姫」

「…うん、私も」

再びきつく抱きしめあう。

私は幸せだ。火傷の跡なんて、もうどうでもいいと思えるくらいに。

だって、私は自分が愛した人に、こんなにも愛されている。

「…ねえ千紘、もう姫って呼ぶのもやめようよ。
遥って呼ばれても別にもう怖くないよ」

「それはやめない」

「なんでよ」

「姫は昔からキラキラしていて、俺にとってはお姫様だった。
それは今も変わらない。
姫と呼ぶのは当然のことだ」

…え?それは母の件があろうがなかろうが関係なかったということ?

なんか脱力。

身体を離した千紘がいつものようににこりと微笑む。

「さあ、ベッドへ行こう」

「えっ待って!
明日も仕事あるし、沙彩のとこに鍵返しに行ったりするから、あんまりしないで」

「ああ、なるべく頑張る」

「なるべくって何!」

「こんなに愛しいのに抑えるにも限度がある。
姫が精力増強剤だと言っただろう。
だから強いて言うなら姫が悪い」

「おかしな理論で私を悪者にするなっ!」


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