世界くんのタカラモノ
勘のいい殿村は、おおよそ気づいているようで顔を背けて笑いを堪えている。いつもなら一言言ってやるとこだが今は殿村に構っている余裕なんて微塵もない。

(アスパラガスの先っちょ……アスパラガスの先っちょ……)

魔法を唱えるように心の中で念じながら、俺は結菜の掌の下から利き手の左手をさし入れるとピョコピョコと動き回っているソイツをグッと握った。

固くもなく柔らかくもなくその感触は紛れもなく昆虫と呼ばれるモノだ。

「うわぁあああっ」

左手の中でピクピク動くそいつに思わず大きな声を出した俺を見て、子供達が驚いた顔をした。

(やばっ……えっと……なんも思い浮かばねー……)


──パチパチパチパチ

聞こえてきた殿村からの大袈裟な拍手に子供達が一斉に振り返った。

「結菜見たか?宇宙くんと銀河くんのパパすごいな」

その言葉にとりあえず無言のまま胸を張った俺を見て、戸惑っていた子供達が途端に拍手と共に満面の笑みになった。

「おじちゃんすごーい」
「パパすごーい!」
「ママ喜ぶねっ」

「お、おう」

何とか虫籠へソイツを入れると俺は額の汗を拭いながら、左手を何度も太腿に擦り付けた。

(気色わりぃ……アスパラガスとは全然違うじゃねーかよっ)

子供達は虫籠へ入れられたソイツを囲むと嬉しそうに眺めている。

(はぁああ……梅子さん初めて抱いたときより緊張したな……)


俺の肩にポンと掌が乗せられ目線をあげれば殿村がふっと笑った。

「ご苦労だったな、御堂」 

「拍手どうも」

「こわがりの子犬くんにしては上出来じゃないのか?」

「マジで梅子さんに言わないでくださいね」

「了解」

口を尖らせた俺を見ながら殿村がまたクククッと笑った。
< 18 / 25 >

この作品をシェア

pagetop