極甘悪魔な御曹司の溺愛は揺るがない【財閥御曹司シリーズ伊達家編】
 エレベーターに乗り、奥にあった鏡を見ながら手櫛で乱れた髪を直すと、壁にもたれかかってハーッと息をつく。
 心臓がいまだかつてないくらいバクバクしていた。十年くらい寿命が縮んだ気分だ。
「なにやってるんだろう、私」
 今さら後悔しても遅いけど、額に手を当て盛大な溜め息をつく。
 バッグの中からスマホを出すと、時刻が八時二十分と表示されていた。
 姉からメッセージが一件来ていて確認する。
【彼氏の家にお泊まり? お父さんたちにはうまく言っておいてあげる】
 そのメッセージを見て、ハハッと乾いた笑いが込み上げてきた。
 いつだって私に優しい姉。その優しさが、今日はなんとなく胸にチクッと刺さった。
 彼氏に振られて、初めて会った人とホテルに泊まったなんて言ったら驚くだろうな。
【ありがとう。もうちょっとしたら家に帰る】
 ホテルを足早に出ると、駅に向かい、電車に乗った。
 土曜日だからか朝の電車はがらんとしていて、椅子に座り、颯人さんのことを考える。
 
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