極甘悪魔な御曹司の溺愛は揺るがない【財閥御曹司シリーズ伊達家編】
 昨日のお酒代とケーキ代くらい置いてくればよかったな。でも、そんな余裕はなかった。
 多分、もう二度と彼に会うことはないだろう。そういう意味では、私の現実の世界にはいない、夢の世界の人。
 ――だけど、颯人さんは私をとても優しく抱いてくれた。
 私を振った翔平くんは、自分の欲望を満たすことしか考えてなかったのにね。しかも、姉の代わりに抱かれていたのだ。
 颯人さんのお陰で翔平くんに振られたショックが消えた。二度と会うことがなくても、私は颯人さんのことを一生忘れられないかもしれない。
 夢のように楽しかった時間。
 神さまが、不幸な私に幸せな一夜をプレゼントしてくれたのかも。
 そう、あれは一夜の夢だったんだ――。
 電車をいくつか乗り換えて代々木上原の駅に着くと、トボトボと歩いて自宅に帰る。
 駅から十分ほど歩いて見える、白い二階建ての洋モダンの家が今の私の家だ。
 ここに住み始めたのは私が十三歳の時。
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