スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「うわあ!新品みたい!」
光莉は修理を終えた椅子に腰掛けた。修理前は脚がガタついているところもあったが、今は抜群の安定感になっていた。長年の使用で色が褪せていた部分も塗り直されてつやつやになっている。
「最高です……!」
嬉しすぎてへへへと変な声が出てくる。
そんな光莉の様子を眩しそうに目を細め眺めていた瀧澤は、背もたれに手をつき光莉を囲い込んだ。
「今日はいつもと感じが違うな?」
「露希さんに手ほどきいただきまして……」
「似合ってる。髪もメイクも全部……」
瀧澤は光莉の髪をひと房手に取った。
社交辞令だとしても褒められるとドキリと胸が高鳴る。瀧澤兄妹による飴と鞭の虜になりそうだ。
「瀧澤専務って……褒めるのがお上手ですよね」
「私はお世辞は言わない」
持ち上げられた髪にキスをされると動揺してしまう。
髪の次はどこにキスをされるか。聞かずとも久志の瞳は既に光莉の唇を捉えている。
無言の期待に応えるように目を瞑ろうとして、ふと『大人のカンケイ』という単語が頭をよぎる。
光莉は無意識のうちに久志の身体をそっと押し返した。
「ご、ごめんなさい……。今日は気分が乗らなくて……」
言葉が上滑りしているのが自分でもわかった。
「……君の気持ちも考えずにすまなかった。家まで送る」
瀧澤は強引にベッドに連れ込むような荒っぽいことはせず、光莉の意思を尊重してくれた。
祖父の椅子を後部座席に載せた帰りのミニバンの車中は、沈黙に支配され気まずいものになった。
(断ることなかったよね……?)
自分で自分の行動が理解できなかった。瀧澤からのキスを拒む理由はなかったはずだ。『大人のカンケイ』になることを最初にねだったのは他ならぬ光莉であった。