スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「何があったの?」
『電話では言えない。どうせ電話で言っても信じてもらえない』
そちらから助けを求めている割にはなんとも思わせぶりなことだ。光莉は心の中で呆れていた。
『とにかく俺と会って欲しい』
「会って欲しいって言われても……」
斗真と会う理由もなければ、助ける義理もない。既婚者と二人きりで会って、無駄にやましい思いを抱える羽目になりたくない。
十五分ほどやりとりを続けてみたが、斗真は「会ってほしい」の一点張りだった。
『いつものコーヒーショップで待ってる』
「あ。切れた……」
光莉が行くと言わないうちに斗真は電話を切ってしまった。電話が切られたちょうどその時、ゲストルームの扉がノックされた。
「着替えは終わったか?」
「すみません!もう少しだけお待ち下さい!」
光莉はスマホをテーブルに置き、慌てて着替え始めた。着替えが終わりゲストルームを出ると、廊下では瀧澤が首を長くして待っていた。
「いつも通り家まででいいか?」
瀧澤は光莉をアパートまで送り届ける気満々だったし、光莉自身も送ってもらうつもりだったが、今日に限っては予定を変更せざるを得ない。
「今日は電車で帰ります」
「それなら駅まで送ろうか?」
「ひとりで平気です!」
槙島家の屋敷の前で瀧澤と別れると、光莉は敷地を隔てる門扉までダッシュした。
(話を聞くだけ、聞くだけだから……)
助けを求める声を無視することができず、光莉は結局斗真に会いに行くことにしたのだ。