スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~
「瀧澤専務」
声を掛けると、瀧澤はゆっくりとこちらを振り返った。
「コーヒーです。比呂人さんから」
「ありがとう」
十月下旬の夜の山中は凍えるように冷える。温かいコーヒーが小さな生き物のように温もりを分け与えてくれる。
「こんなところで何をされていたんですか?」
「……星を眺めていたんだ」
瀧澤に言われた通りスマホのライトを消し、空を見上げてみた。
俯いて下ばかり見ていた光莉は、空の上にこんなに綺麗なものが広がっていることに気がついていなかった。
何万光年先の宇宙から降り注ぐ天然のシャンデリア。目が眩むような光はいつだって地上にいる光莉達を導いてくれる。手を伸ばしても容易く掴めないところが、瀧澤に似ている。
「綺麗……」
満天の星空に圧倒され、光莉は思わず呟いていた。
「育った場所も環境も違うのに、同じ星空を見て同じように感動するとは、不思議だな」
瀧澤の発言には感慨深いものがあった。光莉も同じことを考えていたからだ。
そのまま数分、黙って二人で星空を眺め続ける。会話を挟まずとも、そこには分かり合えるものがあった。
「さあ、休憩はこの辺にして作業を再開しよう。コーヒーありがとう」