スパダリ御曹司のお相手が、私でいいのでしょうか?~一晩だけのはずが溺愛が終わりません~


(言ってくれれば取りに行ったのに……)

 過保護な瀧澤も、兄頼みの露希をも恨めしく思ってしまう。

「露希さんはお元気ですか?」
「撮影で東北の山奥に篭っているらしい。次は山岳映画に出演するそうだそうだ」
 
 どおりでメッセージの返信がやけに遅いと思った。
 アクションの次は登山か。見た目の華やかさ以上に女優業は大変そうだ。
 光莉はパクりと鰻重を口に運んだ。モゴモゴと咀嚼するが、緊張のせいなのか鰻の味はよく分からなかった。
 こんなに美味しそうなのに。

(私、いままでどうやって瀧澤専務と話してたんだっけ?)

 何も考えずに能天気にべらべら話していた頃が懐かしい。結局、会話の弾ませ方を思い出せないまま、食事が終わってしまった。

 それまで沈黙を守っていた瀧澤がおもむろに口を開いたのは、アパートまで送り届けてもらった車中のことだった。
 普段はアパートの入り口に横付けし、光莉を下ろすと走り去るのに、今日はわざわざコインパーキングに車が停められた。エンジンが止められた車内は静寂に包まれていた。

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