一晩だけのつもりだったのに、スパダリ専務の甘い手ほどきが終わりません……なぜ?

「出水さん」

 瀧澤は光莉の名前を呼ぶと、余計なことばかり並べ立てる無粋な唇をキスで塞いだ。手が後頭部に添えられ、舌がぬるりと差し込まれる。

(瀧澤専務とキス、してる……!)

 感極まり、頭が真っ白になる。瀧澤の口づけは優しく、それでいて光莉の身体を芯から熱くさせた。


「そそられないはずがないだろう?」

 瀧澤に再び口を塞がれる。今度はチュッと羽のように軽く、何度も。

(本当にそう思っている……?嘘じゃない?)

 疑心暗鬼に陥る頭の中にはさまざまな思いが渦巻いた。しかし、すべてを瀧澤が攫っていく。
 
「嫌だと言われても……とめられない」

 鼓膜を揺らすセクシーな掠れ声と、前髪から覗く熱を孕んだ瞳に、きゅんと胸が高鳴った。
 ベッドに押し倒された後の記憶はひどく曖昧だった。
 互いに合意の上での一晩だけの甘い手ほどきは、日付が変わるまで続けられた。

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