一晩だけのつもりだったのに、スパダリ専務の甘い手ほどきが終わりません……なぜ?
レッスン3.5.上海にて君を想う

 光莉と一夜を過ごした久志は夜明けと共に目を覚ました。
 目覚めてすぐ、隣で眠る光莉の存在にゆるゆると頬を緩ませる。
 久志は横になったまま光莉の寝顔をしばらくジイっと眺めていた。

(寝顔よりも笑った顔の方が幼く見えるな……)

 本人が気づいているかはわからないが、光莉は笑うと右の頬にだけエクボができる。
 そんな些細な特徴に気がつくことができたのは、テニスの練習中に限らず光莉がいつも笑顔を絶やさないでいるからだ。
 感情を表に出すのが得意とは言えない自分とは違い、光莉の表情はクルクルとよく変わった。
 喜、怒、哀、楽を自分の感じるまま、素直に表現できることは光莉の誇るべき美点だ。他の誰とも比べられない。
 ……正直、見ていて飽きない。

「う、ん……」

 光莉が身じろぎした瞬間、シーツの隙間から豊かな胸元が見えて、久志は目を覆いたくなった。
 夜明けの青白い光に照らされた肌には、まるで自分のものだと主張せんばかりの赤い痕がそこかしこに刻まれていた。
 光莉が嫌がらなかったことをいいことに、衝動のままにいくつもつけてしまった。
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