一晩だけのつもりだったのに、スパダリ専務の甘い手ほどきが終わりません……なぜ?
(私はここまで余裕のない男だっただろうか……)
久志は猛省した。まるで自制が効かなかった。こんなことは初めてだった。
性交に関しては、どちらかといえば淡白な方だと思っていた。
十代、二十代の若者のように意欲的とはいかないが、求められれば応じるし、行為そのものの良さは否定しないと、斜に構えていた結果がこのザマだ。
光莉に女性としての自信を与えるためという建前だったのに、いつしか久志の方が次々と明らかになる彼女の一面に夢中になっていた。
(どこが女らしくないだと?)
初めて喰んだ柔らかな唇は久志を惑わせ、何度も啄まずにはいられなかった。
最初こそ緊張で固くなっていたが、身体を解きほぐしていくにつれて、徐々に心を許してくれるようになり胸が躍った。
瑞々しく引き締まった身体に指を滑らせれば、可愛らしい声で応えてくれる。
久志の欲望を煽る邪な女の顔を一体どこに隠し持っていたのだろう。