出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
「――じゃあ……、瞳子さんは前から計画を?」
テラスで海を眺めながらのランチを終え、今度はティータイムに入った。目の前に置かれたアシェットデセール、いわゆるデザートの盛り合わせは、秋らしい素材を使った一口サイズのスイーツが美しく並べられていた。
そこでようやく龍は、今回の事件に関して自分の知っていることを話し始めた。
驚いたのは、自分がきっかけを作ったと思っていた龍の会社への業務妨害。それは、婚約者の存在を知る前から計画されていたことだった。
「あぁ。あいつは、本気で別れるつもりはなかったのに、あっさり承諾されたのが気に入らなかったらしい。俺を窮地に立たせて、それをあいつが救い、貸しにしたかったんだろうな」
なんて自分勝手な人なのだろう。実乃莉は怒りよりも、そうしなければ龍を繋ぎ止められないと考えた瞳子に、哀れみのような感情が湧いていた。
「高木さん……の件は、遠坂さんが私の父の耳に事前に入れてくださっていたようです。龍さんのことを嗅ぎ回っているのを知り、私にも何か仕掛けてくるのではないかと。一連の脅迫事件の主犯だったみたいです」
「そうか……」
龍はコーヒーを口に運びながら小さく返した。
一通りお互いの情報を出し終えたころには、スイーツの皿は綺麗になっていた。龍の顔に、時々『美味い』と書いてあるのが見て取れて、殺伐とした話しをしていたのに、なんだか微笑ましい気持ちになっていた。
「龍さん。一つ、聞いてもいいですか?」
「ん? なんだ?」
どうしても一つだけ、実乃莉の中で引っかかっていたことがあった。
「瞳子さんとの会話の録音を……高木さんから聞かされて。あれはいったい……」
脅されて言わされたのか、そう思ってもみたが、龍がそう簡単に屈するとも思えなかった。じゃあ、全部が作られたものだったのだろうか? それもなんだかしっくりこなかった。
実乃莉の質問され、龍は急に顔を背ける。口元に手をやったその表情は、顔を赤らめどこか恥ずかしそうだ。
「あいつ、食事に付き合ってくれたら手を引くって言い出したんだ。だから仕方なく。で、その時に、婚約者のこと本当はどう思ってるのか正直に聞かせろって。まさか捏造するとは思わなかったが」
「じゃあ……」
あの録音は龍の本心じゃない。そう思っていた。何か裏があるのだと。
けれど……あれは、自分に向けられていた言葉だった。
結婚したいと願っていたのは、自分だけじゃなかった。それがとても幸せだった。
テラスで海を眺めながらのランチを終え、今度はティータイムに入った。目の前に置かれたアシェットデセール、いわゆるデザートの盛り合わせは、秋らしい素材を使った一口サイズのスイーツが美しく並べられていた。
そこでようやく龍は、今回の事件に関して自分の知っていることを話し始めた。
驚いたのは、自分がきっかけを作ったと思っていた龍の会社への業務妨害。それは、婚約者の存在を知る前から計画されていたことだった。
「あぁ。あいつは、本気で別れるつもりはなかったのに、あっさり承諾されたのが気に入らなかったらしい。俺を窮地に立たせて、それをあいつが救い、貸しにしたかったんだろうな」
なんて自分勝手な人なのだろう。実乃莉は怒りよりも、そうしなければ龍を繋ぎ止められないと考えた瞳子に、哀れみのような感情が湧いていた。
「高木さん……の件は、遠坂さんが私の父の耳に事前に入れてくださっていたようです。龍さんのことを嗅ぎ回っているのを知り、私にも何か仕掛けてくるのではないかと。一連の脅迫事件の主犯だったみたいです」
「そうか……」
龍はコーヒーを口に運びながら小さく返した。
一通りお互いの情報を出し終えたころには、スイーツの皿は綺麗になっていた。龍の顔に、時々『美味い』と書いてあるのが見て取れて、殺伐とした話しをしていたのに、なんだか微笑ましい気持ちになっていた。
「龍さん。一つ、聞いてもいいですか?」
「ん? なんだ?」
どうしても一つだけ、実乃莉の中で引っかかっていたことがあった。
「瞳子さんとの会話の録音を……高木さんから聞かされて。あれはいったい……」
脅されて言わされたのか、そう思ってもみたが、龍がそう簡単に屈するとも思えなかった。じゃあ、全部が作られたものだったのだろうか? それもなんだかしっくりこなかった。
実乃莉の質問され、龍は急に顔を背ける。口元に手をやったその表情は、顔を赤らめどこか恥ずかしそうだ。
「あいつ、食事に付き合ってくれたら手を引くって言い出したんだ。だから仕方なく。で、その時に、婚約者のこと本当はどう思ってるのか正直に聞かせろって。まさか捏造するとは思わなかったが」
「じゃあ……」
あの録音は龍の本心じゃない。そう思っていた。何か裏があるのだと。
けれど……あれは、自分に向けられていた言葉だった。
結婚したいと願っていたのは、自分だけじゃなかった。それがとても幸せだった。