出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜
 最後に龍は、ティータイムの時間ということもあるからか寂しくなっているおにぎりの棚から、残っていたものをほとんどカゴに入れて実乃莉をレジに促した。

「悪いな、持たせて」

 出来上がった袋は四つ。重いものばかり入った袋を二つを下げ、龍は謝りながら店を出る。

「いえ。構いません。そう重くもありませんし」

 実乃莉の持つおにぎりとスイーツに分けられた袋はそこまで大きくはない。重いものは全て龍が持っているが、体格がいいからかそう重そうには見えなかった。
 店を出ると龍はすぐに車の置いてある側とは反対を建物に沿うように曲がる。すぐに見えたのは二階のジムを案内する表示とその入り口だった。
 自動扉を入り、すぐ目の前にあるエレベーターに乗り込むと龍は三階を押す。この建物の最上階がそこだった。

(だから下にいる、だったんだ……)

 先ほどの会話を実乃莉は思い出す。さすがに相手がジムいるわけではないと思っていたが、そう言うことかと腑に落ちた。
 三階に着きエレベーターを降りると人気のない殺風景な廊下に出た。すぐ前には中が見える扉があった。その向こうの白い壁には目線より少し上の位置には"R"と、金色のプレートが貼られていた。
 龍は袋を一旦置くとスマートフォンを取り出し、扉の横に取り付けられていた四角い箱のようなものにそれを翳す。
 ピッという音に続き、カチャリと解錠された気配がすると龍は扉を開けドアを支えた。

「どうぞ。入って」
「はい。失礼します」

 入るとすぐに左に曲がる作りになっている。そこを抜けると長い廊下が突き当たりまで伸びている。その右側は白い簡易な壁で扉がいくつか付いているのが見えた。
 その反対側、実乃莉の左側も簡易な壁で区切られているが、こちらは上部は透明で向こうの様子がよく見えた。
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