夜を照らす月影のように#8
リオンたちなら、僕の前世を話してもいいって思ってる……だけど、話すのが怖い。メルに……親友の零に打ち明ける時も、怖かったくらいだ。

「……ノワール、大丈夫。怖くないよ」

メルの優しい声が、耳に届く。メルと目が合わせると、メルはふわりと優しく微笑んだ。

メルは、いつも僕の欲しい言葉をくれる。いつも、僕の言えない気持ちに気づいてくれる。それが、何よりも嬉しかった。

僕は、覚悟を決めて口を開く。僕が前世で書いた、息抜きとして僕とメルで作った物語の文を暗唱する。

「…………とある町に、1人の道化師の少年がいました。両親から十分に愛を貰えず育った彼は、やがて道化師を演じるようになりました。何を言われても、笑顔という名の仮面をかぶって生活するようになりました。彼は、いつも助けて欲しいという気持ちでいっぱいです。しかし、その声は誰にも届くことはありません」

それを聞いて、皆は驚いた顔をした。メルは、僕が何を言いたいのか察したようで口を開く。

「そんな彼に、1人の友だちが出来ました。友だちも彼と同じような環境で育ったため、2人はすぐに親友へとなりました。そして、時は流れ。親友は詩人に、彼は小説家へとなりました。2人は、いつしか有名になりました」
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