絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
フランチェスカは紙の端にぐにぐにと模様を描きながら、言葉を選びつつ口を開いた。
「その……マティアス様は本当にお優しいわ。花祭りのことでも私の意見をとても尊重してくださって……あたたかく見守ってくれるの」
マティアスは自分を妻としては見ていない。手のかかる妹でも見ているような、それこそ保護者のつもりでいる。その事実を思うと胸が締め付けられて苦しくなるけれど、夫に恋をしているフランチェスカは、今はどんなかたちでも大切に思われるのが嬉しかった。
ふうっと息を吐いて、それからニコッと笑顔を作る。
「結婚してよかったって本気で思ってるわ。マティアス様をお勧めしてくれたお兄様にも、結婚を許してくれた家族のみんなにも感謝してします。ありがとう」
フランチェスカの言葉を聞いて、家族たちは驚いたように一斉に目を見開き、それからニコニコと笑顔になる。
ジョエルもホッとしたように目を細め、それからよしよしと妹の頭を撫でる。
「お兄様も嬉しいよ」
「もうっ、子供扱いはやめてくださる? 私これでもシドニア領主夫人なんですけれど」
わざとらしく唇を尖らせると、また家族たちは「これは失礼」と声をあげて笑ったのだった。
翌朝――。久しぶりの実家で羽根を伸ばしたフランチェスカは、マティアスが迎えに来てくれるのを今か今かと待っていた。
「フランチェスカ、朝からずっと窓の外ばかり見ているね。せっかく帰ってきたと言うのに、もう帰りたい?」
窓の外を見てずっとソワソワしている妹に、兄がからかうように問いかける。
「マティアス殿との生活が楽しそうでなりよりだよ」
「もうっ、お兄さままでそんな意地悪を言わないで」
兄の言葉に赤面しつつ、フランチェスカは照れ隠し半分で、紅茶のカップを口元に運ぶ。
庭に面した応接室の窓を風が叩いている。
王都はすでに春の兆しがある。昔は『早く暖かくなってほしい』と思うばかりだったが、今は王都よりも、寒さ厳しいシドニアを懐かしく思っている。
(私はもう、あの地を私の故郷だと思い始めているのかもしれない……)
「その……マティアス様は本当にお優しいわ。花祭りのことでも私の意見をとても尊重してくださって……あたたかく見守ってくれるの」
マティアスは自分を妻としては見ていない。手のかかる妹でも見ているような、それこそ保護者のつもりでいる。その事実を思うと胸が締め付けられて苦しくなるけれど、夫に恋をしているフランチェスカは、今はどんなかたちでも大切に思われるのが嬉しかった。
ふうっと息を吐いて、それからニコッと笑顔を作る。
「結婚してよかったって本気で思ってるわ。マティアス様をお勧めしてくれたお兄様にも、結婚を許してくれた家族のみんなにも感謝してします。ありがとう」
フランチェスカの言葉を聞いて、家族たちは驚いたように一斉に目を見開き、それからニコニコと笑顔になる。
ジョエルもホッとしたように目を細め、それからよしよしと妹の頭を撫でる。
「お兄様も嬉しいよ」
「もうっ、子供扱いはやめてくださる? 私これでもシドニア領主夫人なんですけれど」
わざとらしく唇を尖らせると、また家族たちは「これは失礼」と声をあげて笑ったのだった。
翌朝――。久しぶりの実家で羽根を伸ばしたフランチェスカは、マティアスが迎えに来てくれるのを今か今かと待っていた。
「フランチェスカ、朝からずっと窓の外ばかり見ているね。せっかく帰ってきたと言うのに、もう帰りたい?」
窓の外を見てずっとソワソワしている妹に、兄がからかうように問いかける。
「マティアス殿との生活が楽しそうでなりよりだよ」
「もうっ、お兄さままでそんな意地悪を言わないで」
兄の言葉に赤面しつつ、フランチェスカは照れ隠し半分で、紅茶のカップを口元に運ぶ。
庭に面した応接室の窓を風が叩いている。
王都はすでに春の兆しがある。昔は『早く暖かくなってほしい』と思うばかりだったが、今は王都よりも、寒さ厳しいシドニアを懐かしく思っている。
(私はもう、あの地を私の故郷だと思い始めているのかもしれない……)