絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
(侯爵だかなんだか知らないが、碌な男じゃないな)
次の瞬間、マティアスは夫人の前に一歩足を踏み出して視界から遮るように立ち、男の肩をつかんでいた。
「なっ、なんだお前は、無礼な!」
いきなり肩をつかまれたカールは戸惑いながらその手を振り払おうとしたが、当然ビクともしない。それどころかマティアスはつかんだ指に力を込めて、低い声で問いかける。
「無礼なのはそっちだ。侯爵夫人に謝罪してください。彼女の子供たちはあなたに非難されるような人物ではないはずです」
その言葉を聞いて、夫人が瞳を潤ませる。
「マティアス……」
「マティアス……? お前っ……! 『荒野のケダモノ』か!」
カールは合点がいったと言わんばかりに背の高いマティアスをにらみつけ、もう一方の手でマティアスを指さす。
「フッ、八年前のお前の失態を僕は覚えているぞ! 侯爵令嬢と結婚したからと言って、由緒正しきヴェルベック家の一員にでもなったつもりか! ノコノコ顔を出して夫面か!? 野良犬のお前にこそ鞭をお見舞いしてやろうか!」
どうやらこのカール・グラフ・ケッペル侯爵という男は、八年前の叙勲式にも顔を出していたらしい。マティアスは当時出席していた貴族の顔など誰ひとり覚えていないのでどうでもいいが。
(ゴミみたいな男だな……)
一応の礼節を保ったが、この男は先ほどからものすごく失礼な言葉しか吐いてこないので、マティアスは仮面を外すことにした。
単純に、無礼には無礼で返す、それだけである。
「俺を鞭打つ? お前が?」
マティアスから零れ落ちた声は、恐ろしく低かった。
そして肩をつかんでいた手を離し、即座に手首をつかんで上にあげる。いきなり腕を引っ張り上げられたカールは驚愕し、振りほどこうとジタバタと腕を動かしたが、マティアスは絶対に離さなかった。
「いいか!? なにを勘違いしているのか知らないが、野良犬が大人しく鞭打たれると思ったら大間違いだ! 俺は打たれる前にお前の喉を噛み切るし、お前が俺の妻と義兄を鞭打つというのなら、その前に俺がお前をぶん殴ってやる! この拳でな!」
次の瞬間、マティアスは夫人の前に一歩足を踏み出して視界から遮るように立ち、男の肩をつかんでいた。
「なっ、なんだお前は、無礼な!」
いきなり肩をつかまれたカールは戸惑いながらその手を振り払おうとしたが、当然ビクともしない。それどころかマティアスはつかんだ指に力を込めて、低い声で問いかける。
「無礼なのはそっちだ。侯爵夫人に謝罪してください。彼女の子供たちはあなたに非難されるような人物ではないはずです」
その言葉を聞いて、夫人が瞳を潤ませる。
「マティアス……」
「マティアス……? お前っ……! 『荒野のケダモノ』か!」
カールは合点がいったと言わんばかりに背の高いマティアスをにらみつけ、もう一方の手でマティアスを指さす。
「フッ、八年前のお前の失態を僕は覚えているぞ! 侯爵令嬢と結婚したからと言って、由緒正しきヴェルベック家の一員にでもなったつもりか! ノコノコ顔を出して夫面か!? 野良犬のお前にこそ鞭をお見舞いしてやろうか!」
どうやらこのカール・グラフ・ケッペル侯爵という男は、八年前の叙勲式にも顔を出していたらしい。マティアスは当時出席していた貴族の顔など誰ひとり覚えていないのでどうでもいいが。
(ゴミみたいな男だな……)
一応の礼節を保ったが、この男は先ほどからものすごく失礼な言葉しか吐いてこないので、マティアスは仮面を外すことにした。
単純に、無礼には無礼で返す、それだけである。
「俺を鞭打つ? お前が?」
マティアスから零れ落ちた声は、恐ろしく低かった。
そして肩をつかんでいた手を離し、即座に手首をつかんで上にあげる。いきなり腕を引っ張り上げられたカールは驚愕し、振りほどこうとジタバタと腕を動かしたが、マティアスは絶対に離さなかった。
「いいか!? なにを勘違いしているのか知らないが、野良犬が大人しく鞭打たれると思ったら大間違いだ! 俺は打たれる前にお前の喉を噛み切るし、お前が俺の妻と義兄を鞭打つというのなら、その前に俺がお前をぶん殴ってやる! この拳でな!」