絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
 ちなみに常々、白猫ちゃん人形にはアクアマリンのような色が似合うのでは? と考えていたマティアスは、ないならいっそ作ろうと思い立った。王都で彼女の目を盗んでこっそりと裁縫道具と生地を注文したのだが、肝心の白猫ちゃん人形がいない今は、そのやる気も駄々下がりである。

 どこかでゴミにように扱われていたらどうしよう。
 せめて人形を可愛がってくれる人の手元にあればいいが――。

 そんなことを考えて、ぐるぐると思考を巡らせていると、どんどん気分が落ち込んでいく。

「――俺はなにをやっているんだ……」

 マティアスは茫然とした表情でぽつりとつぶやいた。
 白猫ちゃん人形にフランチェスカを重ねているくせに、肝心のフランチェスカへの気持ちからは目を逸らしている。
 これでも一応、愚かなことをしているという自覚はある。

(ああ、そうだ。俺は……フランチェスカを愛しいと思い始めている……)

 王都に行くのだって、信頼できるルイスあたりを護衛に付ければいいだけの話だった。それでも自ら着いていくと告げた。彼女と一緒にいたいという気持ちを抑えられなかったからだ。
 そのくせ、王都でフランチェスカから『王太子妃つきの女官を辞退した』と聞いた時、発作的に『もう少し考えた方がいい』と告げてしまった。
 フランチェスカを愛おしいと思う気持ちは日々大きく膨れ上がっていくのに、これ以上愛するのが怖くなった。
 なので王太子妃つきの女官になれば、物理的な距離ができるので自分も少しは冷静になれるのではと思ったのだが、その時のフランチェスカの反応は思っていたよりもずっと激烈で、マティアスはショックを受けた。

(フランチェスカは、本気で俺の側にいたいと思ってくれている……)

 帰りの汽車の中で、うっすらと涙を浮かべて『ごめんなさい』と謝ってくれたフランチェスカを思うと、胸が締め付けられる。
 だが同時に、その顔を見たとき、信じられないくらい嬉しくなってしまった。気持ちが抑えきれず、屋敷に戻った後、彼女の部屋に押しかけ口づけていた。

 また、おやすみのキスのようなふりをして――。

 震えながらもうっとりとキスを受けるフランチェスカに、マティアスの心は恋を初めて知った少年のように震えた。
 誤魔化しようがないくらいに、マティアスはフランチェスカを愛しく思っている。
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