絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
一方、マティアスが無断で外泊した翌日の午後。
「旦那様は昨日、公舎をいつもより早めに出られて、街の外れにある別宅に向かわれたそうです」
アンナの報告を聞いても、フランチェスカの心はひどく落ち着いていた。
疑いが確信に変わり、ある意味安心したのかもしれない。
ああ、やっぱりそうなんだ、という納得が先に来た。
悲しみは後からじわじわと押し寄せてくるのだろう。今は感覚がマヒしているだけだというのもなんとなくわかった。
「マティアス様の別宅をどうやって調べたの?」
「辻馬車に片っ端から行先を聞いたんですよ。『旦那様の落とし物を探している』とかなんとか言えば、みんな協力してくれました。あとそのあたりで商売をしている人たちに聞き込みをして、マティアス様が五、六年前から集合住宅の最上階を借り上げていて、時折姿を見せるというのも確認しました」
「そう……」
「誰かと住んでいるかどうかまではわかりませんでしたが、管理人から最近、王都からの荷物が届いたことだけはなんとか聞き出しました」
(あの請求書ね)
別宅に裁縫道具とドレス生地を、別宅に運び入れたということになる。
「お嬢様」
アンナが表情を強張らせているフランチェスカを見て、心配そうに口を開いたが、
「ありがとう。今日はもう休むわ」
「……わかりました」
アンナは一瞬なにかいいたげに口を開いたが、結局うなずいて部屋を出て行った。
フランチェスカはアンナを微笑みつつ見送った後、そのままごろんとソファーに横になる。
お行儀が悪いのは百も承知だが、もう指一本動かしたくない。
「これはもう、決定的ね……」
昨晩、マティアスは帰ってこなかった。
無断外泊は結婚して初めてである。早く帰れたらお芝居の練習をしようということになっていたので待っていたが、彼は帰宅しなかった。
『お仕事に熱が入っているのかもしれませんね。今日はおやすみください』とダニエルに言われてフランチェスカはうなずいたのだが、この時点でフランチェスカは、なんとなく嫌な予感がしていたのだ。
「マティアス様には、やっぱり本当にお心を許せる、大事な方がいらっしゃるんだわ……」
頭がぼうっとして、自分の声が遠くから聞こえた気がした。
「旦那様は昨日、公舎をいつもより早めに出られて、街の外れにある別宅に向かわれたそうです」
アンナの報告を聞いても、フランチェスカの心はひどく落ち着いていた。
疑いが確信に変わり、ある意味安心したのかもしれない。
ああ、やっぱりそうなんだ、という納得が先に来た。
悲しみは後からじわじわと押し寄せてくるのだろう。今は感覚がマヒしているだけだというのもなんとなくわかった。
「マティアス様の別宅をどうやって調べたの?」
「辻馬車に片っ端から行先を聞いたんですよ。『旦那様の落とし物を探している』とかなんとか言えば、みんな協力してくれました。あとそのあたりで商売をしている人たちに聞き込みをして、マティアス様が五、六年前から集合住宅の最上階を借り上げていて、時折姿を見せるというのも確認しました」
「そう……」
「誰かと住んでいるかどうかまではわかりませんでしたが、管理人から最近、王都からの荷物が届いたことだけはなんとか聞き出しました」
(あの請求書ね)
別宅に裁縫道具とドレス生地を、別宅に運び入れたということになる。
「お嬢様」
アンナが表情を強張らせているフランチェスカを見て、心配そうに口を開いたが、
「ありがとう。今日はもう休むわ」
「……わかりました」
アンナは一瞬なにかいいたげに口を開いたが、結局うなずいて部屋を出て行った。
フランチェスカはアンナを微笑みつつ見送った後、そのままごろんとソファーに横になる。
お行儀が悪いのは百も承知だが、もう指一本動かしたくない。
「これはもう、決定的ね……」
昨晩、マティアスは帰ってこなかった。
無断外泊は結婚して初めてである。早く帰れたらお芝居の練習をしようということになっていたので待っていたが、彼は帰宅しなかった。
『お仕事に熱が入っているのかもしれませんね。今日はおやすみください』とダニエルに言われてフランチェスカはうなずいたのだが、この時点でフランチェスカは、なんとなく嫌な予感がしていたのだ。
「マティアス様には、やっぱり本当にお心を許せる、大事な方がいらっしゃるんだわ……」
頭がぼうっとして、自分の声が遠くから聞こえた気がした。