絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
 そう、机の上の白猫ちゃんは水色の美しいドレスを着ていた。おまけに頭にはビーズで作った精巧なティアラまでのっている。すべてマティアスの手作りである。

 王都から戻った時、彼の秘密の部屋に連れて行ってもらった。
 驚きはしたがフランチェスカ自身不器用の自覚があるので、夫の趣味はもはや尊敬の眼差しでしかない。
 それどころかあまりにもフランチェスカが「すごいすごい!」と興奮するので「もっと早く打ち明けていればよかった」と苦笑していたくらいだ。

 そしてフランチェスカも自分がBBであると打ち明けたのだが、マティアスはかなり早い段階で気づいていたようで、拍子抜けしてしまったくらいだ。
 とはいえ、あまたの勘違いとすれ違いのおかげで、自分たちは己の気持ちにしっかりと向き合うことができ、夫婦として手を取り合うことを選んだのだから、悪いことばかりではないだろう。
 フランチェスカの作家業も、マティアスの応援でまだまだ続けられそうである。

「あぁ……そうだ。どうせ作るなら、いっそあなたのドレスを作りたいな。きっと楽しい」

 最近刺繍にもはまっているらしいマティアスは、ククッと喉を鳴らすように笑うと、フランチェスカの顎先をするりと指先で撫でて、上を向かせる。
 彼の緑の瞳が熱っぽく輝く。

「そうなると……正確なサイズを知る必要がありますが?」

 軽やかに微笑みながらマティアスは手を伸ばして人形を後ろに向かせると、「愛してる」とささやきながら顔を近づける。
 やがて訪れる甘い時間の予感に、フランチェスカはときめきながら目を閉じたのだった。




END
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