絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる

(私が恋をする? 夫になる人を好きになる?)

 すでに馬車はシドニア領内に入っており、明らかに景色が変わっている。

 いったい何の花なのか、低木ではあるがぼってりとした鞠のような緑の花を咲かせた植物が、馬車道のいたるところで咲いて目を引く。窓の外は雪がちらついているのに枯れ木になっていないのはなぜだろう。
 どういう理屈なのだろうか、不思議な植物もあるものだと考えていると、また少し面白くなってきた。

(同じ国の中でも、少し離れればもう私の知らない世界になるんだわ)

 王都の中でなんの変化もなく生きてきた自分も、新しい土地で変わってしまうのだろうか。
 それこそ、物語を紡ぐ以上に楽しいことを見つけたりするのだろうか。

(例えば、夫に恋をしたり……?)

 少しだけ考えて、いやそれはないだろうとフランチェスカは首を振る。

 恋物語はたくさん読んだが、自分が恋をしたいと思ったことはない。
 屋敷から出られない環境のせいもあったかもしれないし、そういう性格なのかもしれない。
 物語を紡ぐくせに、現実に対しては妙にリアリストで『現実はおとぎ話のようにうまくはいかないし、引きこもりで社交性のない自分が恋愛するなんてありえない』と思っているふしがある。

「私が欲しいのは執筆の自由よ。夫になる人がどこでなにをしても気にしないわ」

 そう、フランチェスカは今まで通り小説を書ければ、それで十分なのだから。

< 21 / 182 >

この作品をシェア

pagetop