絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
もちろん侯爵令嬢が小説を書いているなど知られるわけにもいかないので、家族にすら隠しているが、題材がいわゆる『宮廷小説』なため、BBは王宮の内部事情に知識人と噂されているらしい。
BBが男性ではなく、結婚前の侯爵令嬢だと知られるわけにはいかないので、このことは徹底的に秘密にされている。
知っているのはアンナとその兄のふたりだけ。世間にバレれば身の破滅だ。自分だけならまだしも家族に累が及んでしまう。
だが今更、フランチェスカは物語を書くことをやめられなかった。
生まれてこのかた『一番多く見た景色がベッドの中から見上げる天井』だったフランチェスカにとって、頭の中にある自分の世界だけが生きる希望なのだから。
「あたしはBBの小説のファン一号なので、やっぱりやめてほしくないですけどね」
「まぁ、ありがとう」
ふふっと笑うと、さらにアンナは言葉を続ける。
「いや、お嬢様みたいにフワッフワの金髪に青い目をした、妖精さんかな? って感じの完璧美少女が、あんなえげつない男同士の嫉妬や憎しみ、ゴリゴリの愛憎入り混じる魂のぶつかり合いを精緻な筆致で書き上げるなんて、逆にエロイっていうか――モガッ」
「ちょっとアンナったら、声が大きいわよっ」
いくら誰も聞いていないと言ってもさすがにこれは恥ずかしい。
「私はエッ……卑猥なお話を書いているわけではないのよ」
フランチェスカはアンナの口元を覆った手をそのままに侍女をにらみつけるが、彼女はやんわりとフランチェスカの手を外すと、猫のように目を細めてウフフと笑う。
「でもお嬢様、男性同士の性別や性愛を超えた感情を書かれるのが、お好きなんでしょ?」
アンナの指摘に胸の奥がぎくりとする。
BBが男性ではなく、結婚前の侯爵令嬢だと知られるわけにはいかないので、このことは徹底的に秘密にされている。
知っているのはアンナとその兄のふたりだけ。世間にバレれば身の破滅だ。自分だけならまだしも家族に累が及んでしまう。
だが今更、フランチェスカは物語を書くことをやめられなかった。
生まれてこのかた『一番多く見た景色がベッドの中から見上げる天井』だったフランチェスカにとって、頭の中にある自分の世界だけが生きる希望なのだから。
「あたしはBBの小説のファン一号なので、やっぱりやめてほしくないですけどね」
「まぁ、ありがとう」
ふふっと笑うと、さらにアンナは言葉を続ける。
「いや、お嬢様みたいにフワッフワの金髪に青い目をした、妖精さんかな? って感じの完璧美少女が、あんなえげつない男同士の嫉妬や憎しみ、ゴリゴリの愛憎入り混じる魂のぶつかり合いを精緻な筆致で書き上げるなんて、逆にエロイっていうか――モガッ」
「ちょっとアンナったら、声が大きいわよっ」
いくら誰も聞いていないと言ってもさすがにこれは恥ずかしい。
「私はエッ……卑猥なお話を書いているわけではないのよ」
フランチェスカはアンナの口元を覆った手をそのままに侍女をにらみつけるが、彼女はやんわりとフランチェスカの手を外すと、猫のように目を細めてウフフと笑う。
「でもお嬢様、男性同士の性別や性愛を超えた感情を書かれるのが、お好きなんでしょ?」
アンナの指摘に胸の奥がぎくりとする。