絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
(アンナがフランチェスカの執筆活動を支えていたんだな)
侯爵家に仕える侍女にしては、アンナはフランチェスカと親密すぎると思っていたのだ。
身分は違うが、ふたりの間には姉と妹のような信頼関係があるとマティアスは感じていた。その秘密がフランチェスカの創作活動だとすると、納得である。
「本当に、彼女には驚かされてばかりだな」
すやすやと眠るフランチェスカの背中を撫でていると、ダニエルが眼鏡を中指で押し上げながら低い声でささやく。
「まさか離縁するなどと言われないでしょうね?」
「は?」
「確かに作家という職業は男性の専売特許かもしれませんが、才能の前にはそんなものはクソでございますよ。BBはいい作家です。性別などどうでもいいことです」
どうやらフランチェスカと離婚するのではないかと疑われているようだ。
しかもダニエルは主人であるマティアスより、フランチェスカの肩を持っている。
「まさか、そんなことを理由に離縁するわけないだろう。俺は素直に感心してるんだ。ただ……知られていると思うと彼女もやりにくくなるだろうから、これからも知らなかったていでいくつもりだが」
はっきりとそう答えると、ダニエルはホッとしたように「ようございました」と胸を撫でおろす。
(とはいえ、彼女が離縁したいと言い出したらすぐにそうできるように『白い結婚』を提案しているわけで……)
だが作家を続けたいフランチェスカのためには、いっそ『白い結婚』を破棄して本当の夫婦になったほうがいいのだろうかとほんの一瞬考えたが、すぐにその考えは改めた。
いくら王女から直接勲章を与えられた軍人貴族とはいえ、マティアスは元平民でなんの後ろ盾もなく、本来であればフランチェスカとは口をきけるような立場ではないのである。
しかも自分の王都での評判は最悪だ。
結婚生活がうまくいくはずがないし、彼女が作家業を秘密にせざるを得ないように、自分にだって小さくてかわいい人形を収集する趣味を秘密にしている。
(百歩譲って、ジョエルのように美しい青年なら許されるかもしれないが……)
『野蛮な荒野のケダモノ』の趣味がポポルファミリー人形収集だとバレたら、百年先まで笑いものになるだろう。
やはり彼女とはこのまま『白い結婚』を続けるしかないのだ。いつか来る別れのために。
侯爵家に仕える侍女にしては、アンナはフランチェスカと親密すぎると思っていたのだ。
身分は違うが、ふたりの間には姉と妹のような信頼関係があるとマティアスは感じていた。その秘密がフランチェスカの創作活動だとすると、納得である。
「本当に、彼女には驚かされてばかりだな」
すやすやと眠るフランチェスカの背中を撫でていると、ダニエルが眼鏡を中指で押し上げながら低い声でささやく。
「まさか離縁するなどと言われないでしょうね?」
「は?」
「確かに作家という職業は男性の専売特許かもしれませんが、才能の前にはそんなものはクソでございますよ。BBはいい作家です。性別などどうでもいいことです」
どうやらフランチェスカと離婚するのではないかと疑われているようだ。
しかもダニエルは主人であるマティアスより、フランチェスカの肩を持っている。
「まさか、そんなことを理由に離縁するわけないだろう。俺は素直に感心してるんだ。ただ……知られていると思うと彼女もやりにくくなるだろうから、これからも知らなかったていでいくつもりだが」
はっきりとそう答えると、ダニエルはホッとしたように「ようございました」と胸を撫でおろす。
(とはいえ、彼女が離縁したいと言い出したらすぐにそうできるように『白い結婚』を提案しているわけで……)
だが作家を続けたいフランチェスカのためには、いっそ『白い結婚』を破棄して本当の夫婦になったほうがいいのだろうかとほんの一瞬考えたが、すぐにその考えは改めた。
いくら王女から直接勲章を与えられた軍人貴族とはいえ、マティアスは元平民でなんの後ろ盾もなく、本来であればフランチェスカとは口をきけるような立場ではないのである。
しかも自分の王都での評判は最悪だ。
結婚生活がうまくいくはずがないし、彼女が作家業を秘密にせざるを得ないように、自分にだって小さくてかわいい人形を収集する趣味を秘密にしている。
(百歩譲って、ジョエルのように美しい青年なら許されるかもしれないが……)
『野蛮な荒野のケダモノ』の趣味がポポルファミリー人形収集だとバレたら、百年先まで笑いものになるだろう。
やはり彼女とはこのまま『白い結婚』を続けるしかないのだ。いつか来る別れのために。