結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
ウエスト街にあるそこはまだ準備中の店で、外から見ただけでは何のお店なのかさっぱりわからない。
呼び鈴を鳴らしてもノックをしても返事がないので預かった鍵で開錠し、
「ベル……ハルに頼まれてきたんだが」
とルキは声をかけた。
やはり返事がないため、
「悪い、入るぞ」
一応一言断って中に足を踏み入れた。
中は静まりかえっていて、明かりすらついていない。
居住スペースにすると言っていた2階のドアを静かに開けると、人が床に倒れていた。
「……ベル!!」
本当に行き倒れてるじゃないかと駆け寄って声をかける。
「……熱あるな。ベル、大丈夫か?」
意識がないならすぐに医者をとルキが思ったところで、ベルがゆっくり目を開ける。
「あー床で寝落ちしてた……うぅ……目、回る」
状況が理解できていないらしく、きょとんと首を傾げたベルは、
「あれぇ……ルキ様の幻覚見える。ヤバい。揶揄わねば」
うぅっと唸って、何にも思いつかないっと悔しそうに口にする。
「……ベルの思考回路が俺には全然理解できないんだけど」
「……幻覚うるさいな。本物みたい」
ちっと舌打ちして悪態をつくベルに、病人相手とはいえ、このやろうと思わなくもない。
「……頭、回んないや」
なんかフラフラすると立ちあがろうとして失敗し座り込んだベルに、
「ベル。とにかく、公爵家に戻ろう?」
相手は病人と言い聞かせて、ルキは優しく声をかけるも、
「ヤダ」
とベルに一蹴され手を払われる。
まるで子どもみたいに聞き分けのないベルにイラッとしつつ、ルキが文句を言おうとしたところで、
「だって、私いたらルキ様休まんないじゃん。ただでさえ、女嫌いっていうか、苦手なのに。シル様と信頼できる使用人以外の女が屋敷彷徨いて四六時中視界に入ったら、無理させるもん」
とベルはそう言った。
「……ベル」
気を遣われていたのかとルキがベルの名を呼んだところで、
「ルキ様なんて、バカみたいなトラウマ抱えてアホみたいに重いし、面倒くさいし面倒くさいし面倒くさいけど」
と何度も面倒くさいを連呼する。
「おいっ」
ちょっと待て! っと全力で抗議しようとルキが口を開いたところで、
「……無理、させたくないんだもん」
熱で真っ赤な顔をしたベルがううっと唸ってぽつりとそんな事を口にした。
「なのに、自分で出てきたのに、一人がさみしい……なんて、言えない……や」
熱のせいだろう。
いつも勝ち気なアクアマリンの瞳が潤んでいて、とてもか弱い普通の女の子に見える。
ああ、違う。
ベルは最初から可愛い普通の女の子だったのかと、ルキはようやく気がついた。
「とにかく、連れて帰るから」
こんな状態で置いておけないからとそう言って抱き抱えたベルは思ったより軽くて、弱ってもたれかかってくるベルは確かに女の子なのに、嫌ではないとベルの熱が移ったみたいに顔を赤くしたルキはそんなことを思っていた。
呼び鈴を鳴らしてもノックをしても返事がないので預かった鍵で開錠し、
「ベル……ハルに頼まれてきたんだが」
とルキは声をかけた。
やはり返事がないため、
「悪い、入るぞ」
一応一言断って中に足を踏み入れた。
中は静まりかえっていて、明かりすらついていない。
居住スペースにすると言っていた2階のドアを静かに開けると、人が床に倒れていた。
「……ベル!!」
本当に行き倒れてるじゃないかと駆け寄って声をかける。
「……熱あるな。ベル、大丈夫か?」
意識がないならすぐに医者をとルキが思ったところで、ベルがゆっくり目を開ける。
「あー床で寝落ちしてた……うぅ……目、回る」
状況が理解できていないらしく、きょとんと首を傾げたベルは、
「あれぇ……ルキ様の幻覚見える。ヤバい。揶揄わねば」
うぅっと唸って、何にも思いつかないっと悔しそうに口にする。
「……ベルの思考回路が俺には全然理解できないんだけど」
「……幻覚うるさいな。本物みたい」
ちっと舌打ちして悪態をつくベルに、病人相手とはいえ、このやろうと思わなくもない。
「……頭、回んないや」
なんかフラフラすると立ちあがろうとして失敗し座り込んだベルに、
「ベル。とにかく、公爵家に戻ろう?」
相手は病人と言い聞かせて、ルキは優しく声をかけるも、
「ヤダ」
とベルに一蹴され手を払われる。
まるで子どもみたいに聞き分けのないベルにイラッとしつつ、ルキが文句を言おうとしたところで、
「だって、私いたらルキ様休まんないじゃん。ただでさえ、女嫌いっていうか、苦手なのに。シル様と信頼できる使用人以外の女が屋敷彷徨いて四六時中視界に入ったら、無理させるもん」
とベルはそう言った。
「……ベル」
気を遣われていたのかとルキがベルの名を呼んだところで、
「ルキ様なんて、バカみたいなトラウマ抱えてアホみたいに重いし、面倒くさいし面倒くさいし面倒くさいけど」
と何度も面倒くさいを連呼する。
「おいっ」
ちょっと待て! っと全力で抗議しようとルキが口を開いたところで、
「……無理、させたくないんだもん」
熱で真っ赤な顔をしたベルがううっと唸ってぽつりとそんな事を口にした。
「なのに、自分で出てきたのに、一人がさみしい……なんて、言えない……や」
熱のせいだろう。
いつも勝ち気なアクアマリンの瞳が潤んでいて、とてもか弱い普通の女の子に見える。
ああ、違う。
ベルは最初から可愛い普通の女の子だったのかと、ルキはようやく気がついた。
「とにかく、連れて帰るから」
こんな状態で置いておけないからとそう言って抱き抱えたベルは思ったより軽くて、弱ってもたれかかってくるベルは確かに女の子なのに、嫌ではないとベルの熱が移ったみたいに顔を赤くしたルキはそんなことを思っていた。