侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「初日に張り切りすぎて足を痛めたら洒落にならないわよね。今日はこの辺にしましょう。毎日、少しずつでも散歩したら、いつかは王立公園を一周出来るかもしれないわね」

 この日からひどい天気以外、毎日の散歩は欠かせなくなった。

 驚くべきことに、毎日の積み重ねが功を奏したみたい。

 そんなにかからず、広大な王立公園を一周出来るようになった。それどころか、ジョギングを始めた。このわたしが、ゆっくりのペースとはいえ走れるようになったのである。

 アールは、もっとはやく走りたいに違いない。だけど、辛抱強くわたしのペースにあわせて走ってくれている。

 走るだけではない。体力がついた。食事が美味しく、お通じもいい。いいことづくしである。

 だけど、侯爵はあいかわらずどこかのレディにご執心で、一日たりともまともに屋敷にいることはない。

 そのことだけが気がかりだけど、彼によく思われていない以上、こちらからどうアプローチしても関係を悪化させるだけ。だから、気に病みつつもそっとするしかない。

 そんな彼との関係は最悪、というよりかは関係すらないのだけれど、王立公園で知り合いが出来た。

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