侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「どこにも存在しないレディと付き合うふりをして外出し、日がな一日馬車で郊外を駆けまわったり、彼女の様子を窺っているだなどとは。王立公園で見られた女は、詐欺グループの一員だ。リエをひっかけたノーマンの女だ。まずノーマンがターゲットの奥方を誘惑し、それから女のほうが旦那を誘惑する。おたがいに浮気をさせ、おたがいから口止め料や示談金をせしめる。ノーマンの女をやっと見つけだし、その女からノーマンの居所をききだそうとしていた。リエは、ノーマンのところに行くだろうと推測したから」

 苦笑とともにつぶやかれたその内容は、さらにわたしを驚かせた。

 じゃあ、侯爵には好きだったり付き合ったりしているレディはいないわけ?

 そうよね。彼は、はっきりレディに会ってくると言ったことは一度もなかった。

 わたしが勝手にそう思い込んでいた。

 それに、ノーマンは詐欺グループの一員だったのね。

 わたしは、お間抜けにもまんまとひっかっかったというわけね。

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