侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「リエ? まさか、目が覚めたのか」

 彼が立ち上がり、寝台の上に飛び上がるような勢いでのぞきこんできた。

「リエ、ああ、リエ。よかった」

 視線をしっかり合わせると、彼は何度も同じことをつぶやいた。

 強面だけど美しい顔は、クチャクチャになっている。

「大丈夫か? 傷むところはないか?」
「たぶん、大丈夫です」

 体中痛いけれど、嘘をついた。

 これは、彼を心配させない為のついていい嘘。

「ほんとうによかった。そうだ。たくさん言わなければならないことがある……」
「わかっています。侯爵閣下、あなたのおっしゃるとおりです。わたしにはよくわかっています」

 そう言いながら起き上がろうとして、体中の痛みに悲鳴を上げそうになった。
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