侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます

【最終話】これからは三人で……

「アール、どうした」

 侯爵がアールの名を呼んでいる。それが、すぐ近くではなく遠くにきこえる。

 瞼を開けると、アンティークな飾りつけの天蓋が見えた。

「クーン」
「おおっ、アール。よかった。急に倒れたから、どうしたのかと焦ったぞ」

 侯爵の歓喜の叫びが耳に痛いくらい。

 んんんんん?

 自分が仰向けの状態であることに気がついた。

「侯爵閣下?」

 侯爵を呼んでみた。

 小さくてかすれていたけれど、自分の耳にはちゃんと人間の言葉としてきこえた。
< 63 / 68 >

この作品をシェア

pagetop