紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?

「だったらこうしないか。俺の人となりを見てもらうためのお試し期間を設けよう。出会っていきなり結婚するというのも不自然だしな」
「あのう、社長。たった今私は、社長の申し入れを受けるつもりはないと言ったのですが」

「あぁ、勘違いしないでくれ。これは決定事項だ。結婚相手である君のことは既に調べさせてもらった。式場のキャンセル料は元婚約者の男に慰謝料と一緒に全額請求し回収しているし。慰謝料に不足分は俺が足して、弟さんの奨学金も既に支払い済みだ。君に俺の提案を断る権限などない。諦めろ。だからといって強要するつもりはないから安心してほしい」
「……っ!?」

 社長からの提案に続いて、決定事項である旨を言い渡されたことにより、穂乃香が開いた口が塞がらない状態に陥ってしまったのは、元婚約者からいきなりの婚約破棄を言い渡されたあの夜以来、二度目のことだ。

 否、正確にはこの変態社長から突然のプロポーズをされたのを含め三度目だが、この際もうどうでもいい。

 二の句を告げることができず茫然としている穂乃香の耳に秘書の呑気な声が流れ込んでくる。

「良かったではありませんか。社長のように素晴らしい男性に見初められた上に、悩みの種までなくなって」

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