おともだち
 外の明るさにぼんやりと朝だと認識する。
 視界とともに頭もはっきりとしてきた。そうだ、私……そう思うと近い距離で目が合って慌ててタオルケットを引き上げた。

「ちょっと、見ないで! 」

 夜中ににんにくたっぷりのラーメンを食べて浮腫んでいないわけがない。

「はは。大丈夫だって」
「大丈夫じゃないよ、絶対ひどいよ。ラーメンの塩分で顔パンパンで、汗でべたべた。顔は油でテカテカでだよ」

 逃げるように洗面所へ行って鏡を確認すると、肌艶だけは無駄に良いパンパンの顔が映っていた。どうにかしようと顔を洗う。タオルで顔を押さえていると背後に栄司がいて、ふっと笑う。鏡ごしに目が合うと恥ずかし過ぎてどうしていかわからない。

 栄司は私からタオルを取って自分の肩に乗せると
「俺も顔洗う」と私の場所を奪った。
「新しいタオルあるのに」
「いーよ、一旦洗うだけだから」

 一旦、とは?

 顔を拭き終わると、栄司はその場に立ちっぱなしだった私の腰を引き寄せる。ついばむようにキスをすると、私の唇を開かせる。とてもこの場で収まらないようなキスに変わり、何が何だかわからないままに応えた。

 キスをしながら、ゆっくりと元来た道を戻るように押されていく。

「栄司……? 待って、どこいくの? 」
「どこ? んんん-、ベッド」
「え、ベッド。もう朝だけど……。まだ、ゴロゴロして過ごすの? 」
「さぁ、ゴロゴロで済むかな? 」

 栄司はやっと唇を離したかと思うと、近い距離で意味深に笑う。キスを再開すると、私の薄いシャツの中に手を滑らせてきた。

「え、え、嘘。またするの? さっき……」

 それ以上、息を継げなかった。あれ、栄司言わなかったっけ。『俺、そんな性欲強くないから 』って……。
 
 ああ、でも自分の中にまだこんな胸躍る感情が残っているとは思わなかった。
< 144 / 147 >

この作品をシェア

pagetop