おともだち
 さぁ、さぁってどういう事だろう。
 それと、宮沢くんは、私の事が好きなんだろうか。好きなら……、セフレを提案した瞬間冷める気がする。好きだったってことか。

「セフレ、今までいなかったのはわかるけど、他の人にこんな提案したことは? ないよな」
「あ、うん、ないない、もちろん。でも、こんな提案したって受け入れてくれる人いないんじゃない? 都合よすぎて」
「バカだな、逆だよ、逆。男で断る奴いないよ」

 ああ、なるほど。宮沢くんはさっきの『さぁ』の意味を教えてくれたようなもんだ。

 セフレ契約なんて、男は断らない。

「なるほど……」
 そう言った時、なぜか気持ちが沈んだ。気持ちが冷めても、断らないってことか。
 

 ――男の人は気持ちが無くても出来る。それはそうだよね。そもそも、気持ちがあればセフレではなく恋人になるはずなんだから。
「次、オラウータンだって」
「あ、うん」
「思ったよりデカイ」
「本当だ! 」
 
 なんだろうか。気持ちが勝手に沈んで行って、わざとテンションを保つ努力をした。これ以上深く考えたらダメな気がした。

「はは、急に元気じゃん」

「あのカップルの男の人かっこよくない!? 」
 不意にそんな会話が聞こえてきた。若い、学生さんかな、の男女グループがそう言うのは、間違いなく宮沢くんで……やっぱりかっこいいよな、と彼の横顔を見る。かっこいい、本当に。

 ただね、カップルじゃないんだよ、私たちは。セフレ、そう心の中でつぶやく。どうした?とばかりに宮沢くんは私にちょっと微笑んで首を傾げた。ああ、もう。この顔。
 
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