叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
「ずいぶんと褒めて下さるのね。最初はあんな失礼な態度だったのに……」
「確かにあのときの玖生さんは褒められたものではありませんでした。でも……」
大奥様は私の話をうなずいて聞いてくれた。
「彼には女性を遠ざけている理由があって、その話をこの間してくれたんです」
「そう。そんなことをあなたに話したのね」
「話してくれなくても、彼がまっすぐに私に向き合ってくれているので、彼の印象は良くなっていました」
「あなたは玖生と友人でいたいの?でも、玖生は違うんでしょ?どんな形であれ、ふたりで決める事よ。でも、あの子はのんびりしていられなくなった」
「え?」
「夫が今度の誕生日で八十歳になるのを機に引退を決意したの。つまり、玖生にすべてを託すという事よ」