愚痴
「純ちゃんと結婚することにしたの」
 
 基樹は息が苦しくなるほどの動悸を感じていた。

 ――遅かった。

 環奈が決断する前に自分が気持ちを伝えていたら、何か変わっていただろうか。

「へえ、そうなんだ」
「うん……」

 環奈は少し困ったような表情を浮かべている。

「そんな顔して言うことじゃねえだろ」

 そう言って笑う自分は、上手く笑えているだろうか。

 心の準備が出来ていなかった。
 いつかこんな日が来るかもしれないことは分かっていたが、今、ではなかった。


 つい最近まで愚痴ってたくせに。
 誕生日祝ってやるって言ったから、プレゼントだって用意したんだ。
 そんな奴と結婚したって結局……

 喉まで出かかった言葉を飲み込む。

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