愚痴
「今年は大丈夫かなぁ」
「じゃあ……もしまたそんなことになった時は、俺がちゃんと祝ってやるよ」

 不安そうな表情を見せた環奈に基樹はそう言ったが、もし本当にそんなことになれば、もう二度とその男のところには戻らせないだろう。

「でもね、純ちゃん、仕事に関しては本当に真面目なんだよね」
「そんなの当たり前だろ」
「……純ちゃん、お酒飲み過ぎると駄目なのかなぁ」
「はあ? 飲み過ぎる度に浮気とか、そんな男あり得ねえだろ」
「だよねえ……」
「そう思うんなら、禁酒させろよ!」
「……」


 そろそろいいだろうか、と基樹は考えていた。
 もし駄目だったとしても……

 二ヶ月後に転勤が決まっていた。
 振られたとしても、しばらくは顔を合わさずにすむ。やっと決心がついた。

 ――次会った時には伝えよう。

 そう心に決めて環奈と別れたはずだったのだが……

 それから二週間も経たないうちに、基樹は再び環奈から呼び出された。

< 9 / 11 >

この作品をシェア

pagetop